『深刻度を増すエジプトの経済状況』

2013年3月31日

 

 インターナショナ・ルヘラルド・トリビューン紙のサイトが、エジプトの経済状況が危機的状況に、入ってきていることを伝えた。

 その報道によれば、オイルが最大の問題のようだ。農業には散水するための、ポンプを動かすディーゼル・オイルが必要であり、農業機械を動かすオイルも必要になる。しかし、いまエジプトではオイルが不足しており、作物の植え付けが始まる中で、農民は手の打ちようが無い状況に、追い込まれている。

 農業部門でディーゼル・オイル不足が深刻になっているということは、麦の栽培に直接的な影響を及ぼすことになる。エジプトは9千万人に近い人口を抱えた大国であり、その小麦の消費量は莫大だ。その小麦の75パーセントが、輸入に頼っているのだ。それはエジプトの質の悪い小麦に混ぜて、国民の供給するパンの質を上げているためだ。

 エジプトが抱える問題は、この国のほとんどの国民が貧しいために、多くの物資に対して、政府が補助金をつけていることにある。その補助金無しには、生活が出来なくなる人たちが、ほとんどだからだ。

 この補助金が、なんとエジプト国家予算全体の、30パーセントに達しているというのだから、いかにその額が大きいか想像がつこう。この補助金は現在、エジプト政府が追い込まれている資金不足問題の解決に、直結しているのだ。

 IMFが48億ドルの借款を供与する方向にあるが、その条件は補助金の削減にある。しかし、それを受け入れれば、ムスリム同胞団政府は崩壊することになろう。このIMFとの交渉については、10月に予定されている国会議員選挙後に、ということになっているが、それは裁判所が法律的に選挙の実施に、待ったをかけているからだ。

 ディーゼル・オイルの不足が原因で、既に停電が起こっているが、これから暑い夏に向かい、停電が頻発したり、一定時間が停電になるようなことになれば、観光業は大ダメージを受けることになろう。公官庁の仕事も極めて非効率になろう。述べるまでも無く、外国からの企業誘致も、資金導入もこれではうまくいくまい。

 現実に、現段階でエジプトの外貨は、不足の一途にあり、ムバーラク政権の最後にあった、360億ドルの外貨は、現在では130億ドルにまで減少している。

 それは、エジプトが観光業に大きくい依存していることが、一つの原因であろうが、もう一つの原因は国家の補助金の問題であろう。一時期は酪農家が家畜にパンが安すぎるので、餌としてパンを与えていたということがあり、社会問題化したことがある。

 ディーゼル・オイルについても、未だに1ガロンガ2ドルと、アメリカの価格の半分以下だということだ。かつてエジプトはナセルの時代、アラブ社会主義国家であったが、その弊害が亡霊のようにいま、蘇ってきているのかもしれない。