大分前に、エジプト革命後にはムスリム同胞団政権と、官僚機構が対立するだろうと書いた。最近になってその傾向が。表面化してきているようだ。
内務大臣がムスリム同胞団政府の命令する、警察に厳重な取り締まりをさせよ、と命令したことに反発し、モルシー大統領命令を拒否した。警察は警察でサボタージュを決め込んでいる。
結果的に、エジプト国内では種々の犯罪が、激増しているようだ。痴漢、強姦、路上強盗、空き巣などと言った犯罪が増えているし、暴力事件も増えている。警察が取り締まらないのだから、エジプト国民は犯罪の被害を受けやすい、環境の中にいるということだ。
警察官に言わせれば、特別な手当が支給されるわけではないのに、投石やモロトフと呼ばれる火炎瓶攻撃を受けるわけであり、たまったものではないだろう。しかも、国民からは警察が大衆を弾圧している、と受け止められるのだから、たまらないだろう。
軍は軍でモルシー大統領から、厳しい対応を迫られたが『我々の役割は国を守ることであって、街頭に出て国民を殺すことではない。』と大統領命令を跳ね付けている。
最近になって、官僚機構のモルシー大統領に対する反発や、不服従が目立ってきている。軍隊、内務省、警察、情報省といったものがその主なところであろう。加えてマスコミも、モルシー大統領に反発し始めている。
それ以外には、ムスリム同胞団が非合法の時代に牛耳っていた、職能組合で幹部選挙をするたびに、ムスリム同胞団メンバーが破れ、世俗派が就任するようになってきている。
最近、カイロ大学で行われた学生組織の選挙でも、ほとんど世俗派が勝利し、ムスリム同胞団メンバーは退いている。
文化人、ジャーナリストのムスリム同胞団政府に対する批判も、次第に強まってきているが、そのことはムスリム同胞団にとって、不安の種となりつつあるのではないか。もちろん、ムスリム同胞団は最後には、権力を握っているという強みに訴えられる、とは思っていようが。
そのムスリム同胞団に、将来にとって不安の種は、数カ月先に見えている資金不足と、パンの供給の問題であろう。これさえ何とかクリアできれば、ムスリム同胞団の長期政権もありうるのだ。そのムスリム同胞団を日本政府は、どの程度知っているのだろうか。