『エジプト官僚とムスリム同胞団政府とのの闘いは継続』

2013年3月28日

 昨年の12月に話になるが、エジプトの検察長官がムスリム同胞団政府によって、首にされるという決定がなされた。しかし、それは法律に沿ったものではなく、あくまでもモルシー大統領の独断によるものだとして、首になったアブドルマギード・マハムード検察長官は、辞任を拒んできていた。

 述べるまでもなく、アブドルマギード・マハムード長官の首は、ムスリム同胞団側から見て不適切な人物であった、ということによろう。つまり、彼は旧体制派ムバーラク体制支持派の人物だ、ということであろう。

 その後、彼の後任としてタラアト・アブドッラー氏が、検察長官のポストに就任した。彼にとっては極めて名誉なポストであったろうが、その反対側には、前の検察長官であるアブドルマギード・マハムード氏の、不満やるかたない顔が浮かぶ。

 この問題に進展が見られたのは、裁判所の決定によってだった。エジプトの裁判所は、アブドルマギード・マハムード氏を首にすることは、不法であるとして、モルシー大統領の決定を退けたのだ。この決定が出されたのは327日だが、今後エジプト社会のなかで、大きな問題になって行くのではないか。

 それは裁判所の決定は、法に基づいたものであるが、他方、モルシー大統領の決定も、法に基づいたものであるからだ。モルシー大統領が出した特別権限法によれば検察長官を首にすることも、新長官を任命することもできるのだが、他の法に照らし合わせると、それは違法ということになるのだ。

 そこで、どちらの法的正当性を選択するか、ということになり、最終的にはエジプト国民がどちらを支持するか、ということになって行こう。既にエジプト社会内部では、、ジャーナリストや学者、政治家らが持論を展開し始めている。

 これらの意見のうちの大半は、アブドルマギード・マハムード氏の留任を、支持するもののようだ。そうなると、この問題をめぐってマスコミが、このテーマを大きく取り上げることになろうが、そのマスコミを誰が牛耳るか、という新たな問題が起こってこよう。

 この問題をめぐっては、本来は法律の解釈問題なのだが、政治問題にすり替えられていくものと思われる。大統領権限法の決定にあたっては、大衆の側から大きな反発があったにもかかわらず、決定されている。そうなると、大衆側は国民の多数派が認めない、という切り口で出てこよう。

 そもそも、こうした問題が出てきて、大問題になるということは、ムスリム同胞団が経験不足であり、能力において欠けている部分が、あるからではないのか。それを力で補おうとすれば、当然反発も大きくなるということだ。エジプトが安定するまでには、まだ時間がかかりそうだ。