バハレーン政府はレバノンのヘズブラ組織を、テロ組織と断定した。ヘズブラがイランと同じシーア派であり、イランがバハレーンと敵対していることから、出て来た結論であろう。それは、バハレーンとしてはやむを得ない、判断なのかもしれない。
しかし、ヘズブラはアルカーイダやムスリム同胞団などのような、国際的な組織ではない。イスラエルからの攻撃に自国を守ろうとする、弱小集団であり、イランやシリアの援助なしには、成り立たない組織だ。
そうは言っても、イスラエルとの戦争では、心理的に勝利したではないか、と反論する人もいるだろう。それは確かにそうだ。ヘズブラがイランからシリア経由で、供与されたミサイルを使い、イスラエル領土内を攻撃したことで、イスラエル側には相当のショックを与えたことは事実だ。
しかし、その戦争でレバノン側が受けた被害は、イスラエルが受けた被害の、何十倍何百倍にも、相当するものであったことも事実だ。
従って、ヘズブラは自分たちの実力をよく知っており、必要のない暴挙には出ない。いわば賢い強硬派とでも、言った方がいい組織だ。
バハレーンが今回、ヘズブラをテロ組織と断定したことは、バハレーンにとって有利に働くのだろうか。あるいはその逆で、イランをいらだたせ、ヘズブラはバハレーンが主張しているように、バハレーンのシーア派メンバーを軍事訓練する方向に、追いやるのだろうか。
イスラム世界には、多くのテロ組織と呼ばれる組織が存在するが、それらのほとんどは、実は自警の意味で立ち上がったものではないのか。そもそも、バハレーンで始まった抗議行動も、現在のような強硬なものでは、なかったはずだ。同国の多数派を占めるシーア派国民が、スンニー派と対等の権利を要求した、条件闘争に過ぎなかったのではなかったのか。
人間は誰しも自分の安全や立場を擁護するために、時として過激な反応を、示すようだ。そして、その思いが行動に変わった時、往々にして取り返しのつかない結果を、呼びこんでしまうのではないか。
世界のあらゆるところで、そうした現象が起こっている。時代は激変の時と言われている今だからこそ、席について語り合おう、と呼びかける国が存在することが、重要なのではないか。
日本の21世紀における役割は、それなのかもしれない。もし、日本をリードする人たちがそれを間違えた場合、日本と世界をとんでもない方向に、導いていってしまう気がする。いまは冷静さと人に対する温かさが、求められる時代なのであろう。