『フラストレーションが蔓延するアラブ世界ホ不安定』

2013年3月26日

 アラブ各国の首脳には、大分フラストレーションが溜まっているようだ。それはますます社会を、不安定化させる危険な状況であろう。なぜならば、フラストレーションを溜め込んだ首脳たちは、国民を弾圧することによって、そのフラストレーションから、解放されようとするからだ。

 例えば、サウジアラビア政府はインターネットに対する、規制を強化させた。結果は、国民の間に不満を募らせ、反政府の動きを活発化させるのではないか。その後に来るのは、サウジアラビア政府が期待していることとは、全く逆になってしまうのだ。

 ヨルダンでは国王が周辺諸国の首脳について、厳しい意見を述べたが、それは何の解決にもなるまい。ヨルダンではムスリム同胞団の動きが、体制側にとって危険であることから、大本のエジプトのムスリム同胞団から選出された、モルシー大統領を批判している。

 エジプトではモルシー大統領が、活動家を逮捕するよう命令を出したが、そのことによって、エジプト社会はますます反政府の活動を、活発化させよう。若者たちは逮捕投獄されることを、恐れていないからだ。その結果は警察や軍が、ますますモルシー政府との距離を空けていく、ということになるのではないか。

 チュニジアでも、国民に対する締め付けが強化され、権力側の弾圧で死傷者が出るごとに、反政府の機運は高まって行く。このままの状態をこれらの国々が継続すれば、やがては体制が大きく揺らぐことになろう。

 他方、オマーン政府は活動家を釈放し、和解路線を取り始めたようだ。クウエイトでもビドーン(無国籍クウエイト居住者で、彼らは何代もクウエイトに居住しているにもかかわらず、国籍が与えられていない)に対する、国籍の付与を行っている。

 国民に対する強硬路線を、選択している国の首脳たちは、国内の不安定な状況に怒り、全く逆の決定を下しているのではないだろうか。サウジアラビアでは、インターネットの問題だけではなく、斬首刑や銃殺刑も激増している、ということのようだ。

 世の中はブーメラン現象が起こる。いま厳しい国民への対応をしている国は、やがて体制が不安定になるのではないか。こういう緊張した時期にこそ、一度深呼吸をして、冷静に考えてみた方がよさそうだ。誰かアラブの首脳たちに、日本式の深呼吸を、教えてはいかがか。