リビアは42年にも及んだカダフィ体制が打倒されて以来、新しいリビアを建設するための試みがなされてきている。そのなかには、意表を突くようなものもあれば、一見まともに見えても、全くリビアの建国に役に立たないものもある。
いまリビア国内で問題になっているのは『政治的追放法』とでも呼べばいいのだろうか。カダフィ体制下で過去10年20年の間に、政府にかかわっていた人物を、新体制下では追放するというものだ。
一見まともに思えるこの法律が、議会を通過して施行されるようになれば、過去の有能な政府のスタッフは、すべて排除されることになる。これでは、そうでなくとも人材が不足するリビアでは、何事も動かなくなってしまうだろう。
この新法案に真っ向から反対しているのは、革命後に臨時政府のトップの地位にあった、マハムード・ジブリール氏(リビア臨時議会代表)だ。彼もカダフィ体制下で、しかるべき役割を果たしていたために(法律専門家)、この法律が施行されれば、完全に政府の機関から、追放されることになってしまう。
現在、リビアの政治のリーダーを務めている、アリー・ゼイダーン氏はマハムード・ジブリール氏の支援を受けて、新法が施行されないように努力しているが、他方、この新法を何がなんでも、議会を通過させようと思っているのは、イスラミストのグループだ。
もし、この新法が議会を通過してしまえば、ほとんどの閣僚が失脚することになり、組閣したとしても、能力に欠ける者たちだけになってしまおう。つまり、新法はリビアの再建の邪魔にはなっても、進展には何の役にも立たない、ということだ。
しかし、現段階でも希望が無いわけではない。新法に賛成するイスラミストの多くが、マハムード・ジブリール氏に対し、畏敬の念を抱いているということだ。したがって、そう簡単には議会で通過するとは、思えないという期待もある。