エジプトはいまムスリム同胞団という、イスラム原理主義政党が牛耳っているが、その影響があちこちに現れている。例えば警察官は顎ひげを伸ばすことが禁止されていたが、認められるようになった。
今回はエジプトの民間航空省が、カイロ空港などの免税店で、アルコールを売ることは禁止すべきだ、という見解を出した。アルコールがイスラムでは禁止されているのだから、当然だとする考えもあるが、他方では観光が主たる産業であるエジプトで、外人観光客にアルコールを売らないことは、観光産業に悪影響を及ぼす、という考えを持つ人も少なくない。
こ空港免税店でのアルコール販売禁止案を提案したのは、民間航空相のワーエル・アルマアーダウイ大臣だが、彼は航空関連会議のなかでこの考えを披歴した。
しかし、ムスリム同胞団のスポークスマンはこのことについて、明確な返答を避けている。彼はムスリム同胞団としては、もっと重要な検討すべき課題があり、アルコールの免税店での販売については、検討していないと答えた。
エジプトはイスラム教徒がほとんどを占める国家であり、これまでもアルコールの販売は、許可を持つ店のみで行われていた。ホテルやレストランでも、アルコールは提供されるが、高い税金がかけられていた。
このため外人観光客は空港でアルコールを買い求め、滞在中はそれを飲む人たちが多いのだ。
他方、エジプトは古代エジプトのファラオの時代から、葡萄酒を製造してきた国であるだけに地酒も多種類ある。ぶどう酒は各種あり、それなりに飲めるレベルのものであり、70年代には日本の商社が輸入を、検討したことがあるそうだ。
しかし、品質管理が適当であり、クオリテイが一定しなかったことで、日本への輸入は断念されている。これ以外にも、ナツメヤシを使ったアラクがあるが、アニスの香りが強すぎて、とても日本人には飲める代物ではない。
さて本題に戻るが、今回空港免税店でのアルコール販売を禁止すべきだ、と語ったワーエル・アルマアーダウイ民間航空大臣は、どのような意図で語ったのであろうか。実は彼は厳格なイスラム教徒でもなければ、イスラム組織に入っている人物でもなさそうだ。
そうなると、彼の発言はムスリム同胞団を、困らせるための物かもしれない。ムスリム同胞団は国家経済を考えなければならないが、他のイスラム原理主義政党から非難されれば、このアルコール販売禁止を検討し、しかるべき結果を出さなければならなくなるかもしれないからだ。
ほほ笑みは時には、毒を含むこともあるということだ。