エジプトの社会状況は革命後、悪化しているようだ。路上強盗や商店での強姦、バスでのセクハラということが頻繁に、起こっているという報告もある。
実際どの程度ひどいのかということについては、正確な判断をするだけの材料はないが、他方で動き始まっていることを考えてみると、そのひどさの程度が推測できよう。
最近、エジプト国内では治安の悪化から、アメリカなどが設立を許可している、民間警備会社を設立したい、という意向が出始めている。それは十分に顧客を獲得でき、しかもビジネスになるという前提であろう。
デモが活発になると、道路に面した商店や企業の事務所が襲われ、ショウ・ウインドウや窓ガラスが割られ、放火されたりするという被害が生じている。そこで企業側は、こうした被害から自社を守りたい、と思うのは当然であろう。
少ないとはいえ、観光客を受け入れている観光会社は、旅行客を危険にさらすわけにはいくまい。こうしたニーズにこたえるためには、警備会社の警備員は銃器を携帯することになろうが、内務省はそれに前向きな姿勢を示していない。それよりも、民間警備会社の設立については反対の意向だ。
そうは言っても、現時点では警察官が重労働を強いられており、しかも危険な任務を担っている。デモ隊との衝突で何人もの警察官が死亡し、あるいは重傷を負っているが、庶民はその警察官の苦労を、正当に評価してくれていない。
このため、最近では警察官が職務を放棄するということが、頻繁に起こっている。庶民ならぬ、警察官のストライキということだ。
エジプトの警察官はムバーラク体制打倒のデモの時期、デモ参加者に暴力を振るい投獄し、虐待したとして、国民の間から非難が出たが、モルシー大統領の時代になっても、デモ対策は必要であり、暴力による対応が、目立ってきている。
つまり、エジプトの警察官はムバーラク体制の時代も、ムスリム同胞団の率いるモルシー体制時代にも、悪役を演じさせられているということだ。そのうえ最近では、給与の遅配あるいは欠配ということが起こっている。これではやっていられまい。
それで社会的には、民間の警備会社設立の必要性が、拡大していくわけだが、下手をすれば民間警備会社の警備員と、警察官が白昼銃撃戦を展開するような場面も、予測されよう。
リビアでは各種の組織やグループが、銃を手にして頻繁に衝突している。エジプトではそうした事態が、起こらないことを期待する。その意味では内務省の判断は、正しいということであろう。