リビアの首都トリポリで、密造酒を飲んで多数の人が死亡する、という事件が起こった。死者数は51人、他にも重症で378人がトリポリの病院に、担ぎ込まれたようだ。
リビアはカダフィ大佐の時代から、アルコールの販売と飲酒は禁止されていたが、革命後何年かが経過すると、チュニジアから密輸されるビールや、ウイスキーなどは、半分黙認の形がとられていた。
リビアは元々サヌーシー派の、極めて厳しいイスラム教の国であり、アルコールを口にする人はそれほど多くは無かったのではないかと思われるのだが、社会のたがが緩み出すと、国家はこうも変わるものであろうか。
今回の密造酒の飲酒による死亡事件は、実はイチジクやブドウ、デーツ(ナツメヤシ)などを原料に作られた、アルコール飲料(ボハ)の度数を上げるために、メチル・アルコールが含有されたことが、原因しているということだ。
メチル・アルコールは毒性であり、飲用ではないし、それを飲むことは内蔵に疾患をもたらす、危険を伴うもののようだ。呑み助はそれでもやはり、飲みたいのであろうか。命がかかっているというのに。
私がリビアに留学していた頃は、カダフィ大佐の革命後間もない時期であったため、アルコールを飲むことは厳しく禁じられていたから、同じ様な事件が報告されていたが、その時もメチル・アルコールの飲用が原因だった。それ以外には揮発性のある整髪料なども飲まれ、病院に担ぎ込まれる人がいる、と言う話を聞いた。
問題は少量のメチル・アルコールなら、死亡には至らないのであろうが、アラブの人たちは酒をのみ始めると、どうもブレーキが利かなくなるようで、レバノンのベイルートに駐在していた頃、湾岸諸国から来た紳士たちが酒が回ってくると、大暴れするというシーンを、何度も見かけたことがある。
革命で多数のリビア国民が犠牲になって死亡しているのに、メチル・アルコールを飲んで、死亡者を増やすのでは、この国の将来が危ぶまれる。何とかそのことに気が付いてほしいものだ。