エジプトの地方選挙は、当初4月27日に予定されたが、コプト・キリスト教徒のイースターと重なるというクレームが、コプト教徒側から起こり、ムスリム同胞団政権はマイノリテイ重視の姿勢を示すべく受け入れ、選挙開始日を、4月22日に変更した。
しかし、その後も選挙の日程をめぐって、野党の国民救済戦線側などから反対があり、裁判所や選挙委員会からも反対意見が出て、結果的には白紙状態になっている。つまり何時から選挙を始めるか分からなくなっているのだ。もちろん、モルシー大統領は4月22日強行姿勢を崩してはいない。
モルシー大統領が強行姿勢を崩さないのは、選挙さえ実施すれば必ず勝利できる、という目算があるからだ。それはその通りであろう。選挙さえ実施してしまえば、ムスリム同胞団は確実に、多数を占めることができよう。
それは野党側の国民救済戦線の、幹部の意見が分かれているからだ。IAEAの元事務局長のエルバラダイ氏は、選挙ボイコットを強く主張しているが、元アラブ連盟の事務総長のムーサ氏は、彼と意見を異にしている。彼はモルシー政府を選挙で正統に選ばれた政権であり、その政権が進める選挙は、ボイコットすべきではないという考えだ。
他方、ムスリム同胞団は一枚岩の結束であり、今回も選挙で有利な戦いを、展開しよう。
しかし、磐石に見えるムスリム同胞団にとって、決定的な弱みがある。それは湾岸諸国から援助資金を、集められないということだ。それは、ムスリム同胞団に対する危険視が、湾岸諸国首脳の間で、定着しているからだ。例外はカタールだけであろう。
経済不安の解消がなされないなかで、エジプト社会が混乱し、混乱が原因で観光客は激減したままになっている。これではエジプト国民の生活は、苦しくなっていくだけだ。外貨不足は食糧の輸入にも、影響を与え始めている。
エジプト通貨がドルに対して下げ、輸入物資が値上がりし、同時に国内産品の価格も上がり、国民は生活苦に陥っている。こうしたなかでは、全ての歯車が狂い始め、エジプトで採れるたまねぎやトマトの値段までもが、値上がりしている。
そして小麦の輸入が不安になり、パンが値上がりしていくのは必定だ。パンがエジプト社会から姿を消すことになれば、ムスリム同胞団は選挙に勝利しても、権力の座に留まることはできまい。『パンは選挙より怖し』だ