昨年来続いていたトルコ政府とPKK( クルド労働党との交渉が、一定の成果を生み出し始めたようだ。
ことの起こりは、トルコのイスタンブール市に近い、マルマラ海に浮かぶイムラル島に収監されている、アブドッラー・オジャランPKK議長とMIT(トルコ情報部のトップであるハカン・ドアン氏との交渉が、昨年の10月から始まったことだった。
アブドッラー・オジャラン氏とハカン・ドアン氏の交渉が何度か繰り返され、PKKの支持母体であるBDP(PKKに近いクルドの政党)の代表団の、イムラル島訪問などが繰り返された結果だ。
PKK側が3月13日にイラクのカンデ-ル山に、捕虜として捕まえていたトルコの軍人や政府スタッフを、8人釈放したのだ。この動きは、次の和平へのステップに繋がるものであろう、と期待されている。
述べるまでもないことだが、トルコとイラクの国境には、釈放される人たちを待つ、家家族の人たちの姿があり、次いで抱き合って釈放を喜ぶ、姿があったということだ。軍人の一人は父親の出迎えを受けた後、自宅にいる妻に電話で『いつものように家で待っていてくれ、俺はこれから帰宅する。』と語ったということだ。
今度はトルコ政府側がどれだけのクルド人を、釈放するかであろう。PKK側は何千人ものクルド人が、トルコの刑務所に入っているので、彼らを釈放すべきだと主張している。一度にそれだけの人数が、釈放されるとは思えないが、しかるべき、まとまった人数が釈放されることは、期待できよう。
最近の動きのなかで気が付くことは、クルド側もトルコ政府側からも、歩み寄リの傾向が強いということだ。例えばエルドアン首相は彼の妻がアラブ・オリジンであることを明かし、夫婦仲のいいことはトルコ人とアラブ人が、共存が出来ることの証だと語っているし、BDPの幹部も、トルコ人クルド人アルメニア人などが、共に仲良く暮らしていくべきだと語っている。
今回のトルコ人人質釈放の後、クルド側の代表者は『私たちも平和に暮らしたい、戦争を望まないから、今回の人質釈放が成立したのだ。』という趣旨の発言をしている。そのことは、今まで双方にあった、とげとげしい雰囲気が、だいぶ和らいだということを、示しているのではないか。
こうした一連の和平に向けた動きの裏には、やはりトルコの経済発展があるのではないか。トルコ政府は自信を持って、クルド人が主に居住する、トルコ南東部の開発を進める、と語っているのは、資金的裏付けがあるからであろう。