アラブ首長国連邦は、元はイギリスの支配下にあった国々が、一体となって構成された連邦だが、イギリスの学者たちが計画した会議を、潰す動きに出た。これは一体何を意図するのか、興味の持たれるところだ。
イギリスの学者たちがアラブ首長国連邦で、『中東―移行期にあるアラブ世界』と題する会議を計画した。開催地はUAEであったが、この会議のスピーカーであるクリスチャン・コーテス講師が、ドバイに到着した段階で、入国を拒否された。
この会議は2月24日から開催される予定になっていたため、講師の入国拒否を理由に、会議はキャンセルされた。
アラブ首長国連邦の説明によれば『会議はバハレーンのアラブの春革命』を主題にしているために、開催を指し止めにしたということであろう。アラブ首長国連邦政府はバハレーン政府が進めている解決努力を、支持する立場にある。
従って、外部の者がとやかく口を挟み、せっかくの平和的な解決が、ダメになることを恐れたのであろう。
同様の懸念は、バハレーン問題ばかりではない。述べるまでもなく、サウジアラビアではシーア派住民が、政府に対する抗議行動を、長期間にわたって続けているし、クウエイトでもビドーン問題を中心に、政府に対する抗議行動が、展開されている。
アラブ首長国連邦でも同様に、政府に対する抗議行動は始まっている。そのために起こった、過剰な反応と言っても過言ではあるまい。それが今回の決定に、至らしめたのではないか。
他方、今回の会議を企画したイギリスの学者たちは、湾岸諸国でも民主化を進めたいという、明らかな意図に基づいての、行動であったと思われる。
ただ、イギリスは常に学術を前面に出しながら、外国に間接的な関与をしてきている国なだけに、アラブ首長国連邦は今回の会議を、単なる学術的興味によるものではない、と判断したのであろう。
それが英断なのか、あるいはイギリスとの間に、見えない対立を生み出していくのかについては、まだ分らない。少なくとも、反政府派の人士は勇気づけられることであろう。