イランで6月に行われる大統領選挙を前に、第一番に候補者としてモッタキ元外相が名乗り出た。これはあからさまな、アハマド・ネジャド大統領に対する、挑戦であろう。
一時期、アハマド・ネジャド大統領はアメリカ大使館占拠事件のときの、メンバーの一人と噂されたが、モッタキ氏は20代から革命組織に名を連ね、革命達成後は革命防衛隊に名を連ねた、いわば古参の革命家だ。
彼については諸説あり、トルコ大使を務めていた頃に、亡命イラン人を殺害した、とも言われている。しかし、日本大使も経験している人物であり、彼が大統領に就任すれば、イラン・日本関係は改善される、期待がもてよう。
今回の彼の大統領立候補は、アハマド・ネジャド大統領が任期切れになり、彼の推すマシャイエ氏の当選を、阻止するつもりであろう。
モッタキ氏については、ハメネイ派の学者アヤトラたちがバックアップしているし、アハマド・ネジャド大統領と対立してきた、ラリジャニ国会議長も推すであろう。
うがった見方をすれば彼の立候補は、アメリカによる経済制裁の効果が、大分イラン国内で出てきたために、国民の不満が高まっていることを、受けての対応であるのかもしれない。
ハメネイ師派は全ての責任を、アハマド・ネジャド大統領にかぶせ、新しい欧米との関係をモッタキ氏を大統領にすることによって、実現しようと考えているのかもしれない。
少なくとも、モッタキ氏のほうが、西側諸国ではまともな人物としての評価が、アハマド・ネジャド大統領に比べて高いからだ。
イランは一定のレベルまで、核開発を進めることに成功した。これで悪役アハマド・ネジャド大統領には、その責任をとる形で任を降りてもらい、次の段階に入ろうということかもしれない。
イラン人の権謀術は、日本人などが考えに及ばない、レベルだとよく言われる。今回のモッタキ氏の大統領立候補は、最終段階まで実際のところは、分からないかもしれない。
アハマド・ネジャド大統領に対抗してきた、ラリジャニ国会議長も大統領職への野心はあろう。ハメネイ派の推すラリジャニ氏と、モッタキ氏がぶつかり合うことは無かろうから、どこかの段階で調整が、行われるものと思われる。
それはあと1ヶ月先か、あるいは2ヶ月先か見ものだ。