『アメリカのシリア対応に変化の兆し』

2013年2月28日

  アメリカ政府はアサド体制に批判的であり、シリアの反体制側にシンパシーを感じてきていた。しかし、なかなか具体的な方針を明らかにせず、同時に具体的な支援を行わないで来ていた。

 これまで、アメリカがシリアの状況に対応したと思われるのは、親米の湾岸諸国に対する働きかけであり、なかでもカタールやサウジアラビアに対する働きかけだった。カタールとサウジアラビアは、アメリカの意向を受け、シリアの反体制側に対し、資金や武器をトルコなどを経由して、送ってきていた。

 しかし、頑強な軍事力を有するシリア政府は、なかなか反体制側の攻撃によって、崩れることはなかった。このため、シリア内戦は長期化し、膨大な数の難民がヨルダンやトルコ、レバノンなどに流れ出している。

 そうした状況は、シリアの体制に対するロシアや中国、イランの支援があるからでもあろう。これらの国々は、シリアのアサド体制を擁護し、直接間接の支援を、送り続けている。

なかでも、ロシアは地中海地域に、唯一のロシア海軍利用可能な、シリアのタルトース港を確保し続けたいということから、シリア体制に対する支援を、行っているのだ。最近もロシア政府は、黒海から地中海に抜ける、海軍の自由を確保する必要があるとし、シリアのタルトース港に対する高い評価を、明らかにしている。

 アメリカ政府はこれらシリアの、体制擁護派の存在があり、これまでの対応だけでは、問題が解決に向かわない、と判断し始めているようだ。それでもアフガニスタンやイラクのような、直接軍を派兵しての問題解決には、アメリカ政府内部で躊躇する人士が多いようだ。

 アメリカの強硬論者のなかには、シリアの反体制派戦闘員に対する軍事訓練、武器の供与、アメリカ軍の派兵を考えている人たちもいるようだが、現段階ではそこまでは、踏み出せないでいるようだ。

 そこでジョン・ケリー国務長官はフランスの担当者と話し合い、もう一歩進んでシリア反体制派への、支援を検討したようだ。そこから出て来た当面の対応は、非軍事物資の提供、ということのようだ。

 しかし、このアメリカの一歩前に出た立場は、やがてそれ以上の前進を促し、軍の派兵もありうるのではないか、という懸念が湧いてくる。述べるまでも無く、アメリカ国内には軍産複合体なるものが存在すること、ブラック・ウオーターのような軍事支援企業が存在するからだ。

 アメリカのこうした企業群は、以前とは異なり、毎年継続して外国に戦闘員(警備員)を、派遣する必要があるからだ。