エジプトの麦の輸入が、政府民間ともに大幅に減少している、というニュースが流れて来た。その理由は、外貨不足によるものと思われる。麦の輸入が減ることは、パンが不足するということであり、大衆の暴動にもつながりかねない、危険な兆候だ。
エジプト政府は5月末までの分の、麦の備蓄はあると言っているが、その後の保証は何処にもない。
エジプトが外貨不足によって、麦の輸入が出来ないのであれば、国内で生産するしかないのだが、ほとんどが砂漠で覆われた国であり、これから麦畑に変えるのでは、間に合わない。
専門家の計算では、増産したとしても50万トンが限界であり、それで420万トンに達するが、エジプトの年間の麦の消費量は、1880万トンであり、とても間に合わないということになる。
エジプトでは過去に、何度かパンの値上げによる、大衆の暴動が発生している。サダト大統領の時代にもあったし、ムバーラク大統領の時代にもあった。5ピアスタ(1円)という、あまりにも安い国家補助のパンが出回っているために、無駄になって捨てられている量が、異常に多いことが他方にある。
そうは言っても、パンが値上げされれば、国民は不満になり騒ぎ出すだろう。そればかりならまだいいが、実際にパンが市場から姿を消したのでは、国民は飢えに直面することになるのだ。
現在、エジプト政府が厳しい状況に置かれているのは、湾岸諸国からの援助金が期待できないこと、ヨーロッパからの援助が期待できないことに加えIMFからの借り入れには、厳しい条件が付いており、なかなか手が出せないからだ。
そして、外国人観光客の訪問が、エジプト国内不安定によって、延びていない。スエズ運河の通過料は、世界の経済が冷え込んでいるために、伸びていない。そうなるとほとんど四面楚歌の状態、ということになる。
この状態では、野党側も打つ手があるまい。ムスリム同胞団政権を批判はするものの、現段階では権力奪取したいとは、真剣には考えていないのではないか。どうもそうしたことが、反政府デモにおける真剣度を、感じさせない原因ではないか。
最近、エジプトで人気を集めている、ブラック・ブロックと呼ばれる、黒装束の若者たちは『ほとんどのデモ参加者は真剣でない、だから俺たちがやるんだ』。と息巻いている。
そうなると最後の残る期待は、軍の台頭であろう。反政府派の筆頭である元IAEA事務局長のエルバラダイ氏は『選挙がカオスを生み、そうなると大衆は軍の台頭を期待するようになる。』と語ったのは、そのことが原因ではないのか。