『パレスチナ受刑者の死が問題を再燃させるか』

2013年2月25日

 先日、イスラエルの刑務所に収監されていた、パレスチナ受刑者アラファト・シャリシュ・シャーヒーン・ジャラダト氏が死亡した。この事件が今後、イスラエルとパレスチナの関係を緊張させ、収拾がつかなくなる問題にまで、燃え上がる危険性がある。

 イスラエル側の発表によれば、ジャラダト氏は幾つかの病気を持っており、彼の死亡原因は、拷問だけによるものではないということだ。もちろん、パレスチナ側の説明はこれとは反対で、ジャラダト氏は特別な病気を、患っていなかったということになる。

 いずれにしろ、刑務所内で拷問があり、それが死亡の原因であることは、間違いあるまい。問題は2児の父親ジャラダト氏の死亡が原因で、パレスチナ大衆の間に、怒りを燃え上がらせる危険性であろう。

 既に、イスラエル刑務所に収監されている、4500人のパレスチナ人受刑者のうちの、3000人が1日のハンストを決めている。イスラエルの高官は1日のハンストであり、3食抜くだけだ、と軽く認識しているがそうであろうか。

 パレスチナ大衆がこれに呼応して、行動を起こす危険性は高いと言えよう。それはつい最近、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長と、ハマース代表のハーリド・ミシャアル氏が『穏健なインテファーダ』の実施に、合意しているからだ。

 インテファーダとはパレスチナ大衆による、武器を持たない投石を中心とする抵抗運動だが、1987年と2000年に大きなうねりとなり、イスラエル政府は対応に苦慮していた。

 イスラエル政府側はマハムード・アッバース議長に対し、ヨルダン川西岸地区での、パレスチナ人による抵抗運動が過激にならないよう、コントロールしてくれることを申し入れているが、なかなかそうはいかないのではないか。

 何としても、パレスチナ大衆の動きを侮れないのは、ガザにおけるハマースを中心とした抵抗活動が、パレスチナ人の間で一定の評価を得ていることだ。そのことがあるだけに、今回のジャダラト氏殺害事件は、大問題に発展していく危険性があるというのだ。