2月1日はデモが起こる確率の高い金曜日だった。事前に反政府派が宣言していた通り、金曜日のデモは多数が参加し、激しいものとなった。
政府はデモ対策を徹底して強行する、という姿勢を打ち出していたが、それが裏目に出たのかもしれない。治安警察が相当過激な対応をしたようだ。そのことは多数の負傷者が出たということであり、数は少ないものの、死者が出たことも報告されている。
今回のデモで最も衆目を集めるところとなったのは、デモ参加者の男性が治安警察によって、殴打されるだけではなく、素っ裸にされて暴力を受けたことであろう。何処の国でもそうだが、大の大人が裸にされ暴力を振るわれる、という事態は尋常ではない。
その光景がカメラで写され、テレビで放映されたのだ。その映像がエジプト国民や、世界の人たちに与えたショックは、大きかったようだ。エジプトの内務大臣は、国民が望むならば辞任すると語り、国営銀行総裁が辞任を口にしたのは、そのこともあってなのかもしれない。
モルシー大統領を始めとする、ムスリム同胞団の政権は、事態を重く見たのであろう。カンデール首相も早急に謝罪を行っているが、謝罪だけではすまないのではないか。大の男が裸にされ背中を丸めて、治安警察の暴力に耐えている姿は、悲惨と残虐を通り越している。
ちょっとしたミスが大事を生み出し、それがたちまちにして多くの人の知るところとなり、結果的には大衆の怒りを燃え上がらせるのが、昨今の社会情勢だ。チュニジアの一青年の焼身自殺が、ベン・アリ体制を打倒することに結びついたのと同様に、今回の事件はデモの映像の一コマ、を通り越しているのではないか。
アメリカはエジプトがムスリム同胞団によって、統治されることについて訓練期間を認めていた、という話があるが、今回のようなことが繰り返されるのでは、そうも行かなくなるのではないか。ムスリム同胞団は国民と世界を、敵に回すことになるのではないか。