昨年の7月に、ドバイのダーヒー・ハルファーン警察長官が、国際的な組織
による、湾岸体制転覆工作があると警告した。意外な発言でありその裏には何かがあるだろうと思い、この欄でご紹介した。その後、アラブ首長国連邦(UAE)の外務大臣が、ムスリム同胞団の危険性について、公式に言及した。
ドバイのダーヒー・ハルファーン警察長官が警告を発した段階では、シリアの革命闘争に関する支持デモに関係していた。そのメンバーのほとんどが、ムスリム同胞団だったということであろう。
今回同長官や外務大臣の発言を、裏付ける情報がクウエイトから伝わってきた。これはクウエイトのシェイク・ジャーベル・サバーハ首相の、議会での発言に始まる。
クウエイトのサバーハ首相はクウエイト国籍保持者が、アラブ首長国連邦でのムスリム同胞団による、政権転覆活動に対して資金を提供している、という内容だった。このことをクウエイトのアルワタン紙が報じた。
しかし、現段階では裁判前ということもあり、資金提供者の名前を、具体的には明かさなかった。当然のことながら、今後裁判の準備が進んだある段階で、この資金提供者の名前が明かされることになろう。
クウエイトではカタールと並び、ムスリム同胞団は禁止されていない。パレスチナから大分前にクウエイトに移住し、大富豪になったある人物は、ムスリム同胞団のメンバーであり、その後も経済活動を続けている。彼ら富豪にとっては、数億ドル程度の資金を提供することは、あまり難しくないのだ。
アラブ首長国連邦で政権転覆の動きを起こし、それが成功する可能性がある程度でてきたのは、やはり、チュニジア、エジプト。リビアで起こった、アラブの春革命の影響であろう。以来この革命のイデオロギーが、テレビ、ラジオ、新聞などマスコミを通じて、アラブ諸国に広まっている。
このアラブ首長国連邦の政権転覆に関与していたとされ、アラブ首長国連邦在住の、エジプト人ムスリム同胞団メンバー11人が拘束された。エジプトのムスリム同胞団政府は、使を送り直ちに釈放を求めたが、交渉は失敗している。
ムスリム同胞団はアラブ首長国連邦国内で、体制転覆のノウハウを教えていたということのようだ。もちろん、エジプトのムスリム同胞団はそのような事実は無いとし、逮捕は不当だと主張している。
このことが明らかになったことにより、エジプトと湾岸諸国との関係は、今後厳しいものになろうし、湾岸諸国からの資金援助は、期待し難くなるかも知れない。