1月25日はエジプトの革命記念2周年の日だった。予想にたがわずエジプトの各地では、与党のムスリム同胞団の自由公正党政府に対する、抗議デモが展開された。そのデモは決してソフトなものではなく、7人の死者と450人以上の負傷者が出る、相当激しいものだったようだ。
加えて、昨年2月にポートサイドで起こった、サッカー・ファン同士の衝突で、74人の死者が出ていたが、その犯人の裁判で21人に死刑判決が言い渡された。この判決に抗議するデモが起こり、30人以上が死亡している。
これだけの死者が出たのは、警察や軍隊に強攻策を取る許可があったからであろう。もちろん発砲は上層部の許可の下に行われたのだろうが、その責任はモルシー大統領にある、ということになろう。
加えて、警察や軍人が給料をまともに受け取っていないことからくる不満が爆発し、過剰な対応になったともいえるのではないか。昨年の11月にカイロを訪問した折、警察と軍の幹部と話していたら、10月分の給与は半分しか受け取っていない、と言っていた。
こうした状況は、カイロ在住の日本人も相当気になっているだろう。大学の教え子が結婚して、ご主人子供とカイロに住んでいるが、その人から問い合わせがあった。『カイロ、エジプトはこれからどうなるのか?』というものだった。
それに対する私の答えは『これから温かくなり、カイロの中心部にある解放広場(メイダーンタハリール)に、夜を徹して留まることが容易になる。そうなれば次第に解放広場に居座る人たちの数が増え、デモは大きくなっていくだろう。公務員の給与未払い問題は、今後ますます悪化していくので、彼らも不満が高まろう。従って楽観できないばかりか、状況は悪化していくものと思われる。』という答えだった。
野党のサッバーヒー氏やムーサ氏、エルバラダイ氏などは、激しくムスリム同胞団の政権を非難している。彼らはマイノリテイのコプト教徒や女性に対する配慮が、モルシー大統領の強引に進めた新憲法では、全く配慮されていないとも抗議している。
若者たちは職が無く娯楽が無い中では、暴徒化することが唯一の興奮材料に、なっているのではないか。これではエジプトが観光国に復帰するのは、まだまだ先になりそうだ。それは経済状態がますます悪化するということだ。