パレスチナ自治区のひとつガザ地区は、150万人を超す人口が居住しており、しかも、現在ものすごい勢いで人口が増加している。従って、近い将来人口爆発が起こるだろうと予測されている。
そこで話題になり始めているのが、ガザ地区のパレスチナ人の一部を、エジプト領土のシナイ半島に移住させる、という考えだ。この考えは以前、エジプトが5分割される可能性があるというなかでも、少し触れていたと思う。
今回このシナイ半島に、ガザ地区のパレスチナ人を移住させる、という考えが提案されたのは、パスチナ人グループの検討の結果だった。この検討グループの代表者であるムスタファ・アルファッラ技師が、アルコドス紙を通じてこの考えを公表した。
その発表によれば、パレスチナ側はシナイ半島の一部を99年間の間租借し、そこにパレスチナ人を住まわせろというものだ。こうした考え方は、イギリスが中国から香港を租借した例や、アメリカがキューバから、グアンタナモ湾を租借した例などを考えると、決してあり得ない話ではないというのだ。
問題はエジプト国民の反応だ。以前、エジプトの5分割話が出た段階で、エジプトの友人にシナイ半島をパレスに提供する、という考えを話をしたところ、彼は猛烈な勢いでそれを否定した。
彼が言うには、エジプトがシナイ半島をイスラエルから奪還できたのは、エジプト人の膨大な犠牲と勇気によるものであり、シナイ半島の一部をパレスチナ人に与えるという考えは、あってはならないと語っていた。
エジプト人のパレスチナ人に対する同情心や連帯感と、シナイ半島の長期租借は、別問題だということのようだ。したがって、もしパレスチナ人が非合法にシナイ半島に移り住むとすれば、エジプト政府は軍隊を使って、追い出すべきだ、という考えのようだ
しかし、ガザ地区の住民が移り住める残る先は、ヨルダン川西岸地区だけであろうが、そこもイスラエルが戦略的に入植を進めており、とてもガザからの住民が移住できる状況にはない。
そうなると、彼らはガザからヨルダンに移り住まざるを得ないことになるのだろうが、ヨルダン政府は受け付けまい。1967年戦争以前まで、ガザ地区はエジプト政府の統治下にあったことから、ヨルダン政府はエジプト政府が受け入れるべきだ、と主張しよう。
もし、シナイ半島租借の話が実現しなければ、エジプト国内に受け入れることになろうが、その場合どちらがエジプトにとっていいのか。
*ガザ地区:面積約300平方キロメートル、人口150万人強(世界一の人口密度と言われている)