『アルジェリアの人質事件』

2013年1月17日

 アルジェリアのアインマナースにある、ガス・フィールドにある従業員宿舎が、マグレブ・アルカーイダ組織によって襲撃され、41人が人質になったという情報が流れ、後にそのことが事実として確認された。

 我々のような情報に携わる立場の者からすると、ごく当たり前のことであったろう。なぜならば、アルジェリアの南東部リビアに近い地域は、各国の過激組織が、自由に往来出来ている地域だからだ。

 リビアのカダフィ大佐が打倒されたのち、アルジェリア政府はカダフィ・ファミリーを匿ってきた。またアルジェリアに隣接するマリも、非政府組織、ゲリラ組織、イスラム過激主義者たちが、多く集まっている場所でもある。

 したがって、リビアが自国の反政府組織を取り締まろうとすれば、何時の間にか追撃中に、アルジェリア領内に踏み込んでいる場合があるし、その逆の場合もある。

 リビアとアルジェリアは相互に相手国が、自国にとって敵対的立場にある、と非難することもある。それが非体制組織にとって、便利な状況を創っているのだ。そうした中で、今回の事件が起こったわけだが、それが可能になったのには、以下のようなことが考えられよう。

1:リビアとアルジェリアとの敵対関係から出来た空洞。

2:アルジェリア内部の対立。

3:周辺諸国との不安定な関係。

4:フランス軍のアフリカ台頭。

5:アルジェリアのエネルギー資源。

 日本の一部報道では、日本人はこの地域で悪いことはしていないのだから、安全に釈放されよう、という予測もある。そうであって欲しいものだ。

 ただ忘れてならないことは、いま世界が大変革の途上にあるということだ。そのために、あらゆる組織や国家が自分たちの利益を考え、合従連衡する時期でもある。

 その結果は、これまで危険性がある地域では、ほぼ確実に危険な状況が発生する、ということであろう。アルジェリアをめぐる複雑な状況は、これまで何度となく、世界で報道されてきていたのだ。

 そのような状況下で、社員の安全を最重視するのか、あるいは利益を重視するのかは、それぞれの会社のポリシーによろう。国際的なビジネスには、必ずリスクが伴うということを、肝に銘じるべきであろう。それはゲリラやテロに狙われるだけではなく、法律的な罠にはまる場合も含めて言えよう。

 なおこのマグレブ・アルカーイダ組織は人質を取ったまま外国に逃げることと、アルジェリアで投獄中のイスラミスト100名の釈放を要求しているということのようだ。