『モルシーは反セムの非難・何故いまさら』

2013年1月16日

 アメリカのホワイト・ハウスから、意外な情報が流され始めている。それはエジプトのモルシー大統領が、ムスリム同胞団の政治部門の幹部であった、2010年に口にした言葉に対する非難だった。

 ホワイト・ハウスのジェリー・カーネイ報道官が、厳しくモルシー大統領を非難したというのだ。その非難はモルシー大統領が『シオニシトは吸血鬼だ』『シオニシトは戦争待望者だ』『シオニストは猿だ』『シオニストは豚だ』などとシオニストを嫌うよう仕向ける発言を、したということのようだ。

 加えて『イスラエルとパレスチナの和平交渉は時間の無駄以外の何物でもない』とも語っているということだ。

 現在、エジプトの大統領となったモルシー氏が、そのような考えを持っており、しかもそれが変わっていないとすれば、今後、パレスチナとイスラエルとの和平は、進まないということになろう。

 過去に彼がムスリム同胞団の、政治リーダーであった時点では、重く取り上げる必要が無かったのであろうが。現在、彼はアラブを代表するエジプトの大統領に就任しており、問題は簡単ではあるまい。

 そうなると、何故アメリカがことさらに、この問題を取り上げたかが想像できよう。アメリカ政府としては、今後エジプトを支援していく上で、その条件としてモルシー大統領に、現段階での彼の考えを明確にさせたい、ということであろう。

 もし、モルシー大統領が2010年の発言を取り消すのであれば、微罪で済ませることが出来ようが、それを拒むようであれば、今後エジプトと欧米諸国との関係に、前進は見られなくなろうし、イスラエルとの関係では、決定的な不信感が確立していくのではないか。

 何故この問題が今持ち上がったのであろうか。その原因の一つとして考えられるのは、国務長官就任予定のヘーゲル氏の問題が、絡んでいるのではないか。ヘーゲル氏は一般的に反イスラエル、あるいはイスラエルに対しニュートラルな立場の人物、として知られている。

 このため、イスラエル側からはヘーゲル氏の国務長官就任に対し、厳しい意見が寄せられている。そのイスラエルの非難を軽減させることを目的に、今回の問題が取り上げられたのではないか。

 もう一つ考えられるのは、近く迫ったイスラエルの選挙で、ネタニヤフ首相派を優位に持ち込むことを、考えてのものではないか。アラブ最強の軍事国家であるエジプトの大統領が、極めて厳しい反セム感情を持っているとなれば、平和主義者ではイスラエルを守れない、という認識になるからだ。AA