アラブの春が王国にも、影響を及ぼし始めるだろうという予測は、大分前の段階でしてきた。現実にバハレーンでは毎日のようにデモが起こり、サウジアラビア軍の支援を受けるバハレーン政府は、デモ隊に対し厳しい対応を行ってきている。
結果として多くのデモ参加者が負傷し、あるいは死亡した。デモを扇動する人たちは逮捕され投獄されている。ここまで対立が鮮明になると、なかなか妥協は生まれ難いだろう。同じように王制国家のヨルダンでも、大分前から王家と大衆の対立が続いている。表面的には政府と大衆ということになっているが、これは明らかに国王とムスリム同胞団の対立だ。
エジプトの政権がムスリム同胞団の手に渡ったことは、ヨルダンのムスリム同胞団を勇気づけ、闘争意識を強めたものと思われる。チュニジアでもナハダ党が政権与党となったが、これもムスリム同胞団と極めて近い組織だし、リビアではムスリム同胞団の政党(組織)が、圧倒的な力を有している。
ヨルダンではムスリム同胞団以外にも、政治組織や政党はあるが、実際に政府に対抗できるだけの組織力を有しているのは、ムスリム同胞団だけであろう。それだけに、政府にとっても王家にとっても、ムスリム同胞団の動きは、危険極まりないものになっている。
最近になって、ムスリム同胞団は若者層や部族を取り込み始めている。そのことによって、ムスリム同胞団は反政府運動を、ヨルダンのすべての国民の意思としていこう、ということであろう。
そのムスリム同胞団の結束力と行動力が試されるのが、1月23日の選挙ボイコット・デモだ。述べるまでもなく、ムスリム同胞団は他の組織や部族にも、選挙ボイコットを呼びかけている。
ムスリム同胞団は選挙をボイコットするために、1月18日に大規模な反政府(選挙ボイコット)デモを計画し、各組織に参加を呼び掛けている。
こうしたムスリム同胞団の動きに対し、アブドッラー国王は『世俗主義者による独裁も、宗教者たちによる独裁も許さない。』と警告している。しかし、現実にはガソリンが値上がりし、電気代が値上がりし、社会サーブビスが滞っているなかでは、国王の言葉に説得力はあるまい。
ムスリム同胞団は1月18日のデモに向けて、これは『大衆の法的権利』の動きだと命名している。ムスリム同胞団の選挙ボイコットが功を奏すれば、投票率は30パーセント程度にまで下がるのではないか。その後政府はどう説明をするのだろうか。