『クルド自治政府の強気な石油政策とトルコの対応』

2013年1月10日

 クルド自治政府反統治する地域に隣接するキルクークは、イラクのなかにあって、最も有望な産油地帯だと言われている。それだけに、サダム体制下ではクルド人を追い出し、イラク・アラブ人を移住させるということが、行われてきた。

 しかし、サダム体制が打倒されると、アメリカのバック・アップを受けるクルド自治政府は、このキルクークを自分たちの父祖の地だと言い始めた。サダム時代とは逆に、イラク・アラブ人を追放し、クルド人を移住させている。

 これまでキルクークで産出される石油の輸出や、新たな開発については、イラク政府が優先権を持っていた。それはトルコに送り出すパイプ・ラインの所有権が、イラク政府にあるからということもあろう。

 イラク政府はクルド自治政府に対して、イラク政府の許可なく石油を輸出することや、外国企業との間に新たな石油開発を進めることを、禁じてきていた。しかし、次第にクルド自治政府は力を付け、強硬な立場に変わりつつある。

 クルド自治政府が新たに始めた石油輸出は、トルコの財閥メフメト・エミン氏が所有するジェネル社との契約だが、この契約ではパイプ・ラインを使わずに、タンクローリー車で原油をキルクークから、トルコのメルシン港まで運ぶという方法だ。

 ジェネル社はトルコ国内に持ち込んだ原油と交換に、精製油をクルド自治区に戻すという方式のようだ。この流れに合わせ、クルド自治政府はタクタクオイル・フィールドの自主開発も進める方針のようだ。それもトルコのジェネル社との間で進められるようだ。

 現段階ではクルド自治政府が、タンクローリー車を使ってトルコに輸出している原油量は、15000トン・日程度のようだが、将来は増量されるであろう。そうなると、イラク政府との緊張関係が、高まるということであろう。

 このクルド実政府とイラク政府との権益争いを巡る動きを、シェブロン社、エクソン社などが、注意深く見守っているという構図だ。

 クルド自治政府がこうも強気で出てきているのは、述べるまでもなく、トルコ政府との密約があっての話であろう。とてもクルド自治政府だけでは、イラクの正規軍と対峙することは不可能であろう。そして、それはPKK(クルド労働党)問題)解決と繋がっているのではないか。

 トルコ側からはPKK問題の解決に、明るい兆しが見えたという報道がもっぱらだし、ヨーロッパ議会からは現在の動きを歓迎する、とのコメントが出されている。