『エジプトモルシー・大統領は何処を向いているのか』

2013年1月 8日

 最近、エジプトのモルシー大統領の方針が分り難くなってきている。それはイランとの関係を、どうしたいと思っているのかという点でだ。

 モルシー大統領はイランの情報トップをカイロに招き、国内治安の維持や外国人工作員の潜入を、どう防ぐべきかを相談したようだ。モルシー大統領は非同盟諸国首脳会議参加という形ではあったが、大統領就任後間もなくイランを訪問している。

 情報関係のこうした会議がもたれるということは、エジプトがイランとの強い信頼関係を、構築したいという意思表示だ、と外国に認識されても文句は言えまい。

 アメリカを始めとした西側諸国は、大きな疑問をエジプトのモルシー政権に対して、抱き始めているのではないか。西側からの金融面での支援が必要な現在、そうした誤解(認識)を持たれることは、エジプトにとって不都合の極みであろう。

 イランは革命以来、既に30年以上にも渡って、国内外での情報活動を経験してきているだけに、有効なアドバイスをエジプトにしてくれるであろうが、同時にエジプトへの工作をする、いい機会だととらえていよう。

 モルシー大統領の動きでもう一つ疑問なのは、なぜ早い段階で同大統領は、シリアのアサド大統領を国際司法裁判所にかけるべきだ、と語ったのかということだ。

 サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国に対する、リップ・サービスなのかもしれないが、それはリップ・サービスにはならないのではないか。うがった見方が許されるならば、エジプトの意図はアサド大統領を打倒した後に、シリアにムスリム同胞団を中心とする、政権を樹立したいと考えている、ということかもしれない。

 シリアの問題は欧米諸国とロシア中国の利害がからんでいるだけに、旗幟鮮明にするのは、あまり早い段階では不利なのではないかと思われる。もし、外交交渉が成立して、アサド氏がアラウイ地区に国家を建設するような形になれば、モルシー大統領の発言は早すぎた、あるいは軽率だったという批判を、こうむることになろう。

 同時に、前述のように、エジプトがイランとの関係を、構築していこうと考えているのであれば、アサド体制打倒につながる、このモルシー大統領の発言は、イランとの関係を悪化させるものであろう。

 モルシー大統領の決定はすべてが、ムスリム同胞団幹部会議で決定されていると言われているが、この幹部会議では各種の意見が出てこよう。それではなかなか明確な方針を、貫くことはできまい。モルシー大統領が迷いながら政策を進めていっては、問題が出てきても不思議ではあるまい。