最近になって、エジプトにムスリム同胞団の政権が成立して以来、レバノンのヘズブラ組織と、エジプトのムスリム同胞団の与党自由公正党との関係が、強化されつつあるようだ。
エジプト政府とヘズブラ組織との関係は、ムバーラク政権下では劣悪であった。ムバーラク大統領は世俗派であり、イスラエルとの関係を重視していたために、ヘズブラ組織がエジプトとイスラエルとの共通の敵として、認識していたのであろう。
ムスリム同胞団がエジプトの権力を掌握したことによって、状況は完全に変わったということだ。ガザのハマース組織とヘズブラ組織との関係は、共通の敵であるイスラエルを挟んで良好であり、双方のスポンサーがイランであるということも、両組織の関係を強めているのであろう。
エジプトの与党自由公正党は、ムスリム同胞団が作った政党であり、ハマースはガザのムスリム同胞団が、別働隊として結成したものだ。つまり、ガザのハマース組織とエジプトの自由公正党は、お互いに強い関係にあるのだ。
問題はエジプトとヘズブラ組織が良好な関係になるということは、シリア対応でエジプトが湾岸諸国とは全く反対の立場を採る、可能性があるということだ。つまり、アサド大統領との関係を、重視する可能性があるということだ。
問題はそう単純ではない。シリアの反政府派の組織の中で、最も強固な団結を誇っているのは、ムスリム同胞団であろう。現段階で既に、ポスト・アサド体制をリードするのは、ムスリム同胞団であろうといわれている。
そうなれば当然の帰結として、エジプトの自由公正党はシリアのムスリム同胞団を支援しよう。それではエジプトの政権とヘズブラとの関係は、どうなるのであろうか。
湾岸諸国はエジプトの潜在的な、最大のスポンサー諸国であるが、エジプトの政権がどの方向に向かおうとしているのか不安があり、現段階では積極的な協力体制には踏み切っていない。
イランはエジプトのムスリム同胞団に対し、機会あるごとに秋波を送っている。エジプト国内ではイランと同じシーア派信徒が、活動を活発化させているし、政府はそれを許している。
エジプト、レバノンのヘズブラ組織そのいずれもいま、今後どのような立ち位置を選択するか、模索しているのではないか。その結果が出た段階では、意外な展開が出てくる可能性があろう。2013年は不確定要素が山積する中で、スタートを切りそうだ。