『ムスリム同胞団の拡大におびえるアラブ諸国』

2012年12月26日

 アラブの春革命はチュニジアで始まった。結果はナハダ党というイスラム原理主義組織が、権力を掌握した。そのナハダ党はムスリム同胞団とほぼ同じ思想の組織であり、関係はすこぶる緊密だ。

リビアでも革命後に、しっかりした基盤を持っている組織は、ムスリム同胞団であり、この組織は私が留学した170年代初期に、既にしかるべき地歩を確立していた。そのために、カダフィ大佐はムスリム同胞団狩りをしたほどだ。

 エジプトは述べるまでもなく、ムスリム同胞団発祥の地であり、社会に根強く広がっている。そのムスリム同胞団を基盤とするのが、現在の政権政党自由公正党なのだ。

 シリアで内戦が続いて、既に22カ月を過ぎようとしているが、ここでも社会に根付いた組織は、ムスリム同胞団であり、革命達成後にはムスリム同胞団の政党が、権力を握るだろうと予測されている。

 シリアの隣国ヨルダンでも、王制に対する批判が次第に強まってきているが、その反体制運動の中核をなしているのは、ムスリム同胞団だ。最近デモのなかで、あからさまに王制打倒を叫ぶ者すら現れてきている。

 ガザ戦争後、テルアビブまでロケット攻撃することに成功したハマース組織は、パレスチナ全体の英雄になり、遂にマハムード・アッバース議長が苦汁を飲んで、ハマース結成25周年行事をヨルダン川西岸地区で、開催することを許可している。彼らハマースは第3次インテファーダを呼び掛け始めているのだ。

 そしてシリアの北部に位置する、トルコの公正発展党はやはりイスラム主義政党だが、こうして見てみると、北アフリカのほとんどの国々と、東地中海周辺諸国が、ムスリム同胞団あるいはその系列の組織に、牛耳られるようになってきているということだ。

 このムスリム同胞団組織の急激な台頭と拡大は、湾岸諸国ばかりではなく、ほとんどのアラブ諸国に衝撃を与えつつある。彼らがアラブ諸国のほとんどの体制を、構成するようになった時、いったい中東のアラブ諸国は、どのような状況になるのであろうか。

 シーア派のイスラム革命国家イランですら、最近ではイスラム革命に対し、懸念と不安を抱きつつあるようだ。

 欧米はムスリム同胞団組織を甘く見ていたのではないか、という疑念が浮かぶのだが、最近になって少しずつ欧米のムスリム同胞団組織に対する、締め付けが始まったような雰囲気がある。今のうちにコントロールしないと、とんでもないことになりそうだ。