『アサド体制崩壊と中東地図の変化』

2012年12月16日

 

1年以上にも及んだシリアの内戦が、やっと終わりの時を迎えるようだ。今更ながらな話だが、どちらが悪かったのかということは、アサド体制側にも反体制側にも、それぞれに正論があるので、ここではコメントを差し控えよう。

ただ、今回のシリアの政変を機に、シリア国家が分裂の瀬戸際にあることは、確かなようだ。アサド大統領が幸運であり、ロシアが彼を支えてくれれば、彼は地中海東岸に面する地域を、アサド国家として維持出来るかもしれない。

シリアの過去の歴史上、アラウイ派国家なるものがこの地域に存在していたことがあるので、これからそのアラウイ国家が再建されたとしても、あまり荒唐無稽な話ではない。

もう一つは、シリアの北部にほぼ固まって居住する、クルド人たちが自治権を求め、次いでクルド国家を形成していく、可能性があるということだ。既にイラクのクルドとシリアのクルドとの間では、何度か話し合いが持たれ、共同の軍事訓練(イラク・クルド側による軍事指導)が実行されている。この軍事訓練には、トルコのクルド(PKK)も参加しているようだ。

もし、これらの現在見え隠れする動きが、現実的のものになって行った場合、シリアはアサド大統領のアラウイ国家と、クルド人のクルド国家、そしてスンニー派の国家に、3分割されるということになるかもしれない。

この動きが現実のものとかなっていくか否かは、シリア問題に最も影響力を持っているトルコが、どういう選択をするかにかかっている部分が、大きいのではないか。

以前流れた情報では、トルコはイラクとシリアのクルドが、一体となり国家を形成していく段階で、協力するというのがあった。一見、トルコにとって不都合な話のようだが、そうばかりも言えまい。ただし、その場合二つの条件が、満たされる必要があろう。

イラクのクルドはシリアのクルドと一体化され、強化された結果、キルクークを中心とする、イラク北部のエネルギー資源を抑える。そして、そのクルド国家を軍事的にトルコが支えることにより、クルド国家はイラク中央政府の、軍事的圧力から守られる。

トルコは新生クルド国家に対し、見返りとして自国に抱えるPKKを引き取らせ、クルド問題を終わらせる。そうなればメデタシメデタシということなのだが、そう簡単にはいかないかもしれない。

最近、アメリカ政府の一機関が、2030年までにトルコが分割される、という予測を出した。その予測によれば、トルコ東部はクルドの領土となる、という話だ。

エジプトの5分割予測も出ている昨今、この手の話がどれだけ出てきても、別に驚かなくなった。イラクは実質分割され、リビアも分裂した状態にあり、加えてパレスチナの分割、パレスチナ人のヨルダン川西岸からの追放など、話題に事欠かないのが、昨今の中東地域だ。

それだけ中東の各国が、不安定化しているということであろう。そして、欧米列強は、中東に一層介入しなければ、国家として立ち行かなくなってきている、ということではないのか。2013年は中東を始め、世界の状況が大きく変わる年のようだ。