12月15日には、エジプトでムスリム同胞団政権が作成した、新憲法に対する賛否を問う、国民投票が行われる。世俗派野党側はこの新憲法が、ほとんどムスリム同胞団系の学者たちによって、作成されたものであり、世俗派の考えを反映していないとして、反対を表明してきていた。
したがって、世俗派は国民投票そのものの実施にも反対してきたが、政府の決定で実施されることになったし、外国在住のエジプト人は、既に在外投票を始めている。その結果がどうなるのかが、エジプトばかりではなく今後、他のアラブ諸国の内政にも、影響を及ぼしそうだ。
もし、ムスリム同胞団の作成した新憲法が通過すれば、他のアラブ諸国でもムスリム同胞団が元気づき、体制に対する強い圧力になって行こう。そうなれば、ヨルダンやシリアでは体制が、不安定化していくことが、容易に想像できるのだ。この両国には相当数のムスリム同胞団メンバーがおり、すでに表舞台の登場して、反体制活動を展開しているからだ。
エジプトの場合懸念されるのは、反体制側世俗側が未だに最終的な立場を、決めかねているということだ。投票を拒否するのか、投票に参加して『NO] を投票するように、国民を導くのかだ。
世俗派の幹部たちは『NO』を投票するように、と言いだしているが、これでは投票に参加する人としない人に、反対派が分かれてしまおう。そうなれば一丸となって『YES』を投票する、ムスリム同胞団側が絶対に、有利になるのではないか。
結果的に、反対派の『NO』の投票数と、賛成派の『YES』の投票数が合算され、しかるべき投票率になり、賛成派が投票の正当性を、得るとになろう。
そのことを、世俗派は考慮したのだろうか。もし、考慮していないとすれば、あまりにも馬鹿げているではないか。戦う前から敗北が分っている、しかも相手の作戦のままに動かされたのでは、闘う意味があるまい。
新憲法に対する国民投票の結果は、時間を待たずに出るものと思われるが、世俗派はもし結論が{YES』であった場合、次にどのような手段を、講ずるというのであろうか。デモを拡大して、ムバーラク大統領を打倒したように、モルシー政権を打倒するのであろうか。
そうだとすれば、相当数の犠牲者が出ることを、覚悟しなければなるまい。またそのような事態は、軍がクーデターを起こす口実を、与えかねないことも、計算に入れておくべきではないのか。