エジプトでは新憲法制定に向けて、国論が真っ二つに割れて、大騒ぎになっている。ムスリム同胞団出身のモルシー大統領が進める改革で、臨時法が出たがこれは強い反対があり、取り下げている。
しかし、新憲法についてはモルシー大統領も譲れず、強硬突破の方向にある。反対派はこの新憲法が通れば、その後はますますムスリム同胞団の考える方向に、国が向かっていくという警戒心から、断固反対の立場を採っているのだ。
何度か正面衝突もあったが、最近ではムスリム同胞団とそれを支持する人たちのデモと、世俗派のデモ隊がぶつからないように、棲み分けが行われている。それでも双方の間には、種々の問題が発生しているようだ。
最近になって、問題になってきているのは、何者かが世俗派のデモ隊に対して、銃を乱射するという事態だ。世俗派側はこの犯人を、ムスリム同胞団だと決めつけ非難しているが、必ずしもそうとは言い切れない部分が、あるのではないか。
この点について、元ムスリム同胞団の大幹部は『ムスリム同胞団によるものではない。』と明確にムスリム同胞団の関与を否定している。彼は否定した後、この犯行はムバーラク支持派によるものであろう、と語っている。
あるいは、その可能性は否定できないかもしれないが、常識的に考えればムスリム同胞団よりも、もっと厳格なサラフィ派の、犯行ではないかとも思われる。
ただ、世俗派のデモ隊に発砲したということだけを見た場合、外国からはムスリム同胞団の犯行の可能性が高い、ということになるのではないか。エジプトのなかには、ムスリム同胞団以外に、サラフィ派組織がある、あるいはムバーラク支持派によるとまで考えるのは、相当エジプト事情について詳しい人たちだけであろう。
そうであるとすれば、世俗派のデモ隊に対する発砲事件は、世俗派にとって有利な宣伝材料になり、逆にムスリム同胞団にとっては、不利な材料になるということではないか。
この銃弾が外国のしかるべき機関によって、発砲されたとも考えるべきであろう。昨年のエジプト革命の折には、銃器が大量に某大使館から持ち出され、デモ隊に対し解放広場のそばのビルの屋上から、発砲されたという情報が流れていた。
ムスリム同胞団が権力を手中に収め、それを維持するために、反対派の世俗派を銃撃するということは、考えたくないのだが。