いま世界の多くの人たちが程度の差はあれ、マヤ暦の話を耳にし、それに心を動かされているのではないか。マヤ暦とは2012年12月21日、世界は終わりの日を迎えるというものだ。
マヤで古い昔に作られた暦が、2012年12月21日で終わっていることから、このことが話題になったのだ。しかも、ご丁寧にもこの暦は何千年も前に、作られたものであるにもかかわらず、極めて正確であり、それが2012年12月21日で終わっていることには、然るべき意味があるというのだ。
中国ではマヤ暦の終末を信じた人が、大金を投じてノアの箱舟を真似た大きな船を、建造しているという話もある。確か、ハリウッドでも似たような話があり、映画になったはずだ。
このマヤ暦の終末の話題は、トルコ人の間でも話題になり、少なからぬ数の人たちが、不安を抱いているようだ。そこで、トルコのイスラム聖職者のトップが、この不安に答えている。
メフメト・ギョルメズ氏がその人だが、彼はマヤ暦の話を『単なる迷信だ。』と切って捨てている。彼は『そんな迷信に惑わされてはならない。これは黙示録ではない。』と語っている。
メフメト・ギョルメズ氏は『そのようなことで、心を不安に貶めるよりも、現世で善行を積みなさい。現世で善行を積めば天国には入れます。現世で善行の種を撒いた者は、天国でそれを収穫することが出来るのです。』と語っている。
まさにそうであろう。確か中世の後期に、ハレー彗星が地球に衝突し、人類は滅亡するという噂が広がり、ヨーロッパでは多くの人たちが、自殺したり大散財し、その後に困窮したという話があった。
ここで大事なことは、マヤ暦であれハレー彗星の来襲であれ、人間はそのことによって心を乱すのではなく、冷静に自分に与えられた運命を受け入れ、日々の役割を果たす、ということであろう。
それは重い病に犯された人の、生き方と共通していよう。『貴方の余命は1ヶ月ですよ。』と言われた人が、自暴自棄になったり、落胆の淵にしゃがみこむのではなく、淡々と自分の役割を果たし続け、然るべき日を迎えることの方が、その人にとって幸福であろう。貴方にはその役割がありますか?
2011年3月11日に始まった世界の大変革の中で、今後はもっと厳しい状況に入っていくと思うが、そういうときにこそ、人は試されるのではないか。そして集団や国家も、そのようななかにあってこそ、初めて真の力を発揮できるのであろう