パレスチナが国連総会でオブザーバー国家の資格を得た。このことについては国連安全保障理事会ではないので、アメリカもイスラエル擁護に回り、拒否権を発動することが出来なかった。
問題は、オブザーバー国家になったパレスチナ自治政府に、この資格を得ることによって、何が出来るかということだ。つまり、オブザーバー国家になったメリットは、何なのかということだ。
イスラエル側は一方的な動きだとして、パレスチナ自治政府に対して相当強い反発をし、東エルサレム地区やヨルダン川西岸地区で大掛かりな入植地の建設住宅の建設を進めることを決めた。
この中でヨルダン川西岸地区のE-1と呼ばれる地域に入植地が建設されるとヨルダン川西岸地区は南北に分断され、行き来が出来なくなってしまうのだ。それでは例えパレスチナ国家が出来ても西岸地区2地域とガザ地区の3つに分断されることになってしまう。
このイスラエル側の計画はそれを見越してのものであることは疑う余地もあるまい。イスラエル側はパレスチナ自治政府が困ることをあえて決定したということであろう。
このイスラエル側のあからさまな嫌がらせに対して、パレスチナ自治政府は早速国連の、オブザーバー国家の資格を使うようだ。パレスチナ自治政府のナビール・シャアス氏はICC(国際刑事裁判所)に対し、イスラエルの進めようとしている、E-1地区の入植地建設と、パレスチナ自治政府に渡すべき1億ドルの関税を、渡さないことを訴える拠に出そうだ。
一見パレスチナ自治政府が強気の行動に出た、と思いたいところだが、必ずしもそうではないと思える。それはイスラエルがこれまで、パレスチナ側に対して行ってきた、非人道的な軍事攻撃や、要人暗殺などについては、訴えるつもりが無いからだ。(一説によれば、それはオブザーバー国家資格だけでは、まだ不可能だということのようだ。)
パレスチナ自治政府は今回の入植地問題と、関税未払い問題で、イスラエル側の出方を、瀬踏みする気かもしれない。あまりにも急速に強硬な出方をすれば、それ相応のしっぺ返しを受けることを、パレスチナ自治政府は予測したのかもしれない。
いずれが正しいかは別に、国連のオブザーバー国家資格を得たパレスチナ自治政府は、今後イスラエルにとって、頭痛の種になるかもしれない。パレスチナの主張に欧州諸国は、否定的な立場をとらなくなる可能性が高いからだ。