12月4日、エジプトのカイロ市では大統領府に対する、大規模デモが行われた。報道によれば、10万人規模だということなので、相当な人数が集まったということであおる。
そこで、興味が湧いたのは大統領が、デモ隊が押し寄せて間もなく、大統領府から立ち去った、というニュースが流れたのだ。表向きは二つの会議をこなしたので、帰ったということのようだが、そうであろうかという疑問が湧いてくる。
治安警察がデモ隊をを前に、撤収したのは大統領府内部に、モルシー大統領がい居なくなったから、警備の必要が無いという判断のようだが、それだけだろうか。このデモに先立ち、内務相は中立の立場を採るという内容の、発言をしている。
このデモを前後して、もう一つあった動きは、モルシー大統領の新憲法制定に対し、判事組織がモルシ―大統領が打ち出した、新憲法に対する国民投票に立ち会わないと言い出し、多くの判事がその通りにするということだ。
加えて、エジプトのマスコミが大挙して、反モルシー大統領の立場を明確にしている。新聞12社が発行を停止し、テレビ局5社が放映を停止したのだ。一部の新聞は発行してはいるが、一面トップで反モルシー大統領の立場を、鮮明にしている。
つまり、エジプトではいま、マスコミも法曹界も警察も、モルシー大統領への支持を止め、反対側に回っているということだ。しかもここで追い込まれているムスリム同胞団の与党は、欧米からも見放されつつあるということは、今後エジプトの政治を担当していく武器が、どんどん奪われている、ということではないのか。
こうした苦しいなかで、モルシー大統領率いる与党は、反モルシー大統領派の代表な人士に対し、スパイ容疑を口にし始めている。サッバーヒ氏、エルバラダイ氏などがそれだが、いったい何を証拠に言い始めているのであろうか。
もし、モルシー大統領が彼らに対して、自分の支持派の裁判官を使って、有罪判決でも出そうものなら、問題はますます悪化するだけではないのか。
どうも最近のエジプイトの状況を見ていると、泥仕合が始まったという感じがしてならない。あること無いこと引き出して、お互いが潰し合い非難し合う状況に、なってきているのではないか。
その混乱の後に、エジプト社会に和解の空気が流れるのであればいいのだが、そうはならないだろう。イスラム主義者と世俗主義者が暴力で衝突するか、そのような状況を見て軍がクーデターを起こすかの、いずれかではないかと思われる。
平和的に問題を解決するために、アラブのいずれの国も役割を果たし得ないし、欧米諸国もどう手を出して仲介していいのか、分からない状況になってきたということだ。エジプト人は平和を愛し、笑顔を絶やさない人たちであったのに、実に残念なことだ。