『ガザ戦争の収支決算とパレスチナの国連承認』

2012年12月 3日

11月に起こったガザ戦争は、イスラエル国民が6人ほど死亡し、ガザのパレスチナ人も16人ほどが犠牲になった。双方にとって、それはそれなりに悲惨な出来事であったろう。それなりにと表現したのは、ガザの場合、家族を失った人たち以外には、大した犠牲ではなかった、と考えていることだ。

イスラエル側は政府も遺族も、心を痛めたのではないか。そのガザ戦争が始まったそもそもの原因は、ガザ側からのイスラエル領土に対して発射された、ロケット攻撃だった。

パレスチナ側にすれば、イスラエルが理不尽な対応をし続けているからだ、ということになろうが、世界は必ずしもそうは見てくれまい。挑発したのはガザのハマースだ、ということになろう。

人的被害もさることながら、ガザは公共施設やインフラを、相当破壊されてもいる。この再建に必要な資金は、外国からの寄付によるのであろうが、その分だけ外国の関与が、拡大するということでもあろう。

もう一つのパレスチナ自治政府による、国連でのオブザーバー国家としての承認問題も、ある意味で共通した部分がある。一見パレスチナ問題の進展、と取れないこともない国連承認は、実はイスラエル側を、強硬な立場に追いやったのではないか。

イスラエルでは近く選挙がおこなわれるが、そこではガザ戦争と、国連でのパレスチナ国家承認とがあいまって、強硬な政策を掲げる政党を、支持する国民が増えるのではないか。

ネタニヤフ首相が対抗措置として挙げたのは、パレスチナ自治政府に渡すべき関税を、渡さないという手段だった。その額は月額で1億ドルだが、パレスチナ自治政府にとっては痛いだろう。その資金が公務員の給与に充てられていたからだ。つまり今回のイスラエル側の対抗措置で、パレスチナ自治政府は公務員給与の支払いに、ことかくということだ・

パレスチナの国連承認の後、イスラエルのネタニヤフ首相は、東エルサレムに3000戸の住宅を建設する、許可を出している。ヨルダン川西岸地区でも、今後なし崩しに、入植地の拡大が行われて行こう。

それを阻止するには、パレスチナ自治政府が武力に訴えるしか、無いのではないか。アメリカ政府はこうした入植地の拡大に対し、明確に反対の立場をとってはいるが、それだからと言って入植地を破壊する、行動には出るわけがない。結果的に拡大した者が勝ち、ということになるのではないか。

国連でのパレスチナに対する、オブザーバー国家としての承認を、パレスチナ人は大喜びし、マハムード・アッバース議長の帰還を大歓迎した。しかし、それは紙に描いた餅であり、決して実の伴うものではあるまい。

パレスチナ自治政府には今後、ICC(国際刑事裁判所)に対し、イスラエルの不法行為を、提訴することも検討しようが、それとても、大きな成果を挙げるとは思えない。

PLO(パレスチナ解放機構)のファルーク・カドウミ氏は『戦わずして土地を奪還できることはない。』と語っている。考えようによっては、パレスチナ自治政府が勝ちえた、国連での国際的国家承認は、パレスチナ自治政府にとって、手かせ足かせにもなりうるのではないのか。