『イラン国内が混乱に向かっている』
パレスチナのガザ地区に対するイスラエルの猛攻、それに対抗するガザ側からのイスラエルへの攻撃で、クローズアップされたことの一つに、イラン製のファジュル5と呼ばれる、ミサイルがあった。
戦争後、ガザ住民はイランの軍事協力に、感謝の声を上げている。それは、イランにとって極めてうれしい、反応であったろう。しかし、ガザとは異なりイラン国内では、イラン政府に対する不満が次第に拡大している。
その原因は、欧米によるイラン石油ガスの輸入停止措置で、ヨーロッパ諸国はさる7月からイラン石油の輸入を停止した。そのことは、直接的にイラン経済に、ダメージを与えている。
イランに対する欧米の締め付けが厳しくなったのには、二つの主な理由がある。一つはイランの核開発であり、もう一つはイランのシリア政府支援だ。そのいずれも欧米諸国にとっては見逃せない問題だ。
イラン国内では、石油ガスの輸出が大幅に制限されているために、外貨不足が起こっており、外貨($)での貿易決済が出来ず、質の悪い小麦を石油と交換で受け取っている。
パキスタンとの取引は、ほとんどがパキスタンの小麦米と、イランの石油ガスの物々交換の形になっている。イラン国民が経済制裁で、飢えるようなことは起こらないだろうが、輸入食品の質の低下で、まずいパンや米を食べざるをえなくなっている。ちなみに、イランが一ヶ月に輸入する小麦の量は、1000万トンだそうだ。
輸入問題だけではなく、公務員に対する給与支払いでも、問題が起き次は時間の問題だといわれている。エジプトでは既に、給与の半額支給が起こっているのだ。イランもエジプトとは条件は異なるものの、似通った問題が起こることは必定であろう。
このため、イラン国民は全国規模で、反体制デモを繰り返すようになってきているが、イランの最高レベルのリーダーたちは、今後の国内動向に、強い懸念を抱いているようだ。
これから懸念されることは、第一に国民による反体制デモの勃発と拡大(既に全国で反政府デモが起こっている)、欧米によるさらなる経済金融制裁、来年の選挙に向けた国内の不安定化、といったところであろうか。
ハメネイ師が議会でのアハマ・ネジャド大統領非難を止めろ、と発言したが、これ以上権力内部が分裂し、対立することのリスクを計算したためであろう。