『M・アッバース議長の弱音かあるいはデマ情報か』

2012年12月29日

 

サウジアラビアがスポンサーだといわれている、ロンドン発行のアラビア語紙にアル・ハヤート紙がある。

そのアル・ハヤート紙が最近、意外なことを報じた。同紙によれば、パレスチナのマハムード・アッバース議長は、来年1月に行われる選挙の結果次第で、ヨルダン川西岸地区の統治権を、イスラエルのネタニヤフ首相に渡す、と語ったというのだ。

マハムード・アッバース議長は、イスラエルとの和平交渉がうまく進展せず、しかも選挙で敗北した場合は、パレスチナの自治権を放棄する、ということのようだ。

このマハムード・アッバース議長の発言は、イスラエルのハルテス紙とのインタビューの中で語ったというのだが、彼は『もし選挙後に和平交渉が進展しなければ、電話の受話器を取ってネタニヤフ首相に、私のイスに座ってもらいパレスチナ自治の鍵を渡すと伝える。』と語ったというのだ。

つまり、マハムード・アッバース議長はパレスチナの自治権を放棄し、ネタニヤフ首相にパレスチナに関する全権を、委譲するということだ。

こうした弱気の発言が、マハムード・アッバース議長の口を搗いて出たということは、2010年以来イスラエルとパレスチナ自治政府との和平交渉が停止されたままであり、進展が全く無いことに起因していよう。しかし、和平交渉が進展しない状態にあるにもかかわらず、他方ではイスラエルのヨルダン川西岸地区への入植が、どんどん進んでいる。それを阻止する何等の手段も、マハムード・アッバース議長には無いのだ。

そのことは、ハマースのヨルダン川西岸地区での台頭を許し、マハムード・アッバース議長に対する、風当りを強くしている。それは単なる非難では無く、将来的にはマハムード・アッバース議長の、生死に関わる問題にまで、進展しかねない状況がある、ということであろう。

マハムード・アッバース議長はイスラエルとの、和平ごっこを続けることによって、これまで権力の座を維持して来られたが、これからはどうもそうは行かないということであろう。エジプトのムバーラク大統領やリビアのカダフィ大佐が失脚したように、マハムード・アッバース議長が失脚することも、十分予想される昨今なのだ。

マハムード・アッバース議長が生命の危険から逃れようと思えば、チュニジアのベン・アリ大統領のように、早期にパレスチナの地から逃げ出すか、あるいはカダフィ大佐のように、パレスチナ人によって処刑されるかであろう。そのいずれも彼には受け入れられまい。