アメリカ政府がエジプト政府に対し、IMF からの借り入れを延期したほうがいい、というアドバイスをしたようだ。これまでエジプトとIMF との間では、48億ドルの借り入れ話が進んでおり、IMFは基本的にエジプトの要請を、受け入れていた。
エジプト政府はいま資金難で苦しんでいるわけだから、IMFでもどこからでも借金して、急場しのぎをしたいというのが本音であろう。それを真っ向から否定する意見が、アメリカによって出されたということは、どういうことであろうかといぶかりたくもなる。
アメリカが考えているのは、現在のエジプト国内情勢が不安定だ、ということに始まっているようだ。財政難からモルシー大統領は増税をしようと考え、そのむねを既に発表している。
基礎物資に対する国家補助を減らすだけでは足りず、各種の税を発動しようとしているのだ。しかし、新憲法をめぐる国民投票が行われ、その結果に不満な世俗派国民による、反政府活動が活発であることを考慮すると、現段階での増税は、社会不安の元になる危険性があろう。
IMFがエジプトに限らず各国に資金提供する場合、各種の条件を付けるのが普通だ。その第一は政府の補助金カットだ。小麦粉パン砂糖お茶といったものや、場合によってはガソリン灯油などへの政府の補助金を、減らさせるか全面カットさせるかだ。
以前、エジプトではサダト大統領の時代に、パンに対する国家補助を減らし、大暴動になった経緯がある。今回の場合もその危険がある、とアメリカは判断したのではないか。
アメリカはエジプト政府に対し、落ち着いて増税や政府補助金カットが出来る状況になってから、IMFに対し申し込んだ方がいいということのようだ。IMF としても、条件が満たされていないことで、エジプトへの援助を取りやめるのはまずいだろう。
問題はエジプトの財政状態が、極めて悪化しているなかで、どうやって今後を乗り切っていくのか、ということではないか。今年度の赤字額は230億ドルにも達しており、この金額はエジプトのGDPの、7・9パーセントにあたる。
我慢が出来ずに借り入れ交渉を進めれば、条件はもっと厳しくなろう。かといって我慢をすれば、エジプトの世俗派がこれ幸いとばかりに、国民を煽り暴動に発展する危険性があろう。モルシー大統領はいまハムレットの心境であろうか。