『IMFベニスの商人とモルシー内閣』
エジプトではいま、ムスリム同胞団選出のモルシー大統領体制が、極めて不安定な状況に追い込まれている。彼が臨時的措置として、権限を大統領の手に一任する、という構想を発表したところ、猛烈な反発を世俗派から、受けるようになった。
ムスリム同胞団のモルシー体制が、今後持ちこたえられるか否かは、経済の動向にかかっていよう。そのためには、モルシー大統領は外国からの、資金調達をしなければならない。モルシー大統領とムスリム同胞団のナンバー2のシャーテル氏が、湾岸諸国を歴訪したが、資金の調達に失敗している。
それは、湾岸諸国がムスリム同胞団に対し、危険視し始めているからであろう。アメリカやヨーロッパ諸国も、エジプトの現状を見ると、とても金を貸す気には、なれないようだ。あわせて、資金援助の話も進んでいない。
もう一つの資金源として、エジプト政府が期待したのはIMFだった。この組織から48億ドルを借り受けたいと、必死に交渉してきているのだが、IMF側は返済計画の提示を求めており,エジプト政府が提出する返済計画は、ずさんであり現実性に欠けている。
そうなるとIMFはエジプト政府に対し、基礎的な消費物資に対する補助金の廃止と、課税を要求してくる。そのIMFの要求を入れ、モルシー政権は各種の物品に対する増税を、ほぼ決めたようだ。
例えば、ソフトドリンク、アルコール、タバコ、ビール、各種のライセンス、不動産売買、広告収入、それに所得に対する課税などだ。
エジプトではいま、モルシー大統領に対する反発が、国内中で高まっており、反対派は遂に、モルシー政権打倒さえも、叫び始めている。その折も折、国民にとって最も嫌う増税の発表を、モルシー大統領がしなければならないのは、気の毒なことだ。
IMFの金は何処やら、ベニスの商人を思わせはしないか。『借りた金のタカをお前の体の肉で支払え!!』にも似た『金を借りたければ貧乏人から絞り上げろ、そうするなら貸してやろう。大衆がお前に反発するなら、弾圧すればいいだけのことだ!!』つまり、世の中の動きと構造は、『ベニスの商人』が書かれた頃から、何も変わっていないということか。