イランのアハマド・ネジャド大統領が、国内外問題で持論を展開した。その内容は極めて厳しいものであり、今後しかるべき反応が出てこよう。彼がこの時期に、そうした問題を暴露する発言を口にしたのは、何故なのかということも、併せて考えてみる必要がありそうだ。
最初にアハマド・ネジャド大統領は『イランの300人の金持ちたちが、イランの富の60パーセントを独占している。』と語ったのだ。それはどうやら、バザールの大商人たちのことを、指しているようであり、彼らが銀行から巨額の資金を借り受けて輸入し、その品物を販売した後も、借入金を返済していないことを、明かしている。
アハマド・ネジャド大統領は昨年の段階で、これらのうちの250人の名前を、アリー・ラリジャニ国会議長に報告したが、その後も何ら調査をした様子は、無いとも語っている。
バザールの大商人たちと言えば、ホメイニ革命を支えた人たち、として知られており、いわば、ホメイニ革命の陰の主役たちのことだ。したがって、彼らはホメイニ政権下でも、その後のハメネイ体制下でも、特別の位置に置かれて来ている。
ホメイニ革命後に、革命政府側に移ったパーレビ時代の財産の一部は、アヤトラたち(宗教最高学者たちの組織)によって運用されてきていた。その資金を借りて、バザール商人たちは巨額の取引を、してきていたのだ。この資金は国庫に直接関係していないことから、一般には外貨が入手困難な時期でも、バザールの大商人たちは、借り入れが可能になっていたのだ。
つまり、今回のアハマド・ネジャド大統領による、300人の大金持ちに対する非難は、実はアヤトラたちに対する非難だ、と言っていいだろう。彼が国会で資金運用をめぐり、吊るし上げられたが、今回はアハマド・ネジャド大統領側が攻撃する番だ、ということではないのか。
アハマド・ネジャド大統領が国内問題批判の後に行った、国外批判は主に湾岸諸国を、指しているもののようだ。『小国が武器を買っても、自国を守ることはできない。小国がどうあがいてみても、自国を防衛できないことに加え、聖地エルサレムの奪還も、パレスチナ問題の解決もできない。結局はアメリカの利益になるだけだ。』という内容だ。
加えて、アハマド・ネジャド大統領によれば、そうした小国(湾岸諸国)は、結果的にイランのパーレビ国王のような、終焉の時を迎える、という痛烈なものだった。アハマド・ネジャド大統領の反撃が一定の効果を生むか否かは今後の動向をみるしかない。現段階ではまだ判断しかねる。