『ガザ戦争イスラエル・ハマース・エジプトの収支決算』

2012年11月28日

 

物事には何でも裏と表、功と罪があるということであろ。ガザ戦争がやっと落ち着き、停戦が成立している。この停戦が何時まで続くのか、という不安は未だにある。それは、イスラエル国民の相当数が、もっとガザを攻撃し続けるべきだった、と考えているからだ。

ガザを再度占領し、全てのパレスチナ人を追放すべきだ、という考えもイスラエルのなかにはある・彼らの理屈は、そもそもシナイ半島はモーゼのものであり、イスラエルがパレスチナにくれても、何等おかしくないという考えなのだそうだ。

確かに、それを暗示させるような動きが、無いわけではない。エジプト国内には、同国が5分割されるのではないか、という懸念がある。その一つはシナイの分離独立であり、そこには、パレスチナ人が住み着くというのだ。

こうしたことが現実になるかどうかは、まだ先のことであろう。現在の段階では、ガザ戦争を終えて何がどう変わったのか、について考えてみたい。

ガザ戦争とその停戦に関わったのは、イスラエルとガザのハマース、そして調停役を果たした、エジプトのモルシー政権だ。この戦争を経て、各関係者にとって、どんなメリットが生まれたのかについては、次のように評価出来るのではないか。

イスラエルはアイアン・ドームが、極めて有効に機能することを確認でき、万が一イラン攻撃が起こった場合の、事前の対応策を検討する材料を得た。しかも、イスラエルはハマースのファジュル5ミサイルを、ほとんど破壊することに成功した。

ハマースは今回のガザ戦争を通じて、完全にPA(パレスチナ自治政府)から切り離された政治組織として、国際的に認知された。結果的に、ヨルダン川西岸地区でも、PA(パレスチナ自治政府)よりも、ハマースに対する評価が高まり、パレスチナ人の支持も増えた。

エジプトのモルシー大統領は、アメリカのオバマ大統領と緊密に連絡を取りながら、立派に調停者としての役割を果たしえた。結果的に、エジプトのムスリム同胞団が結成した、自由公正党は国際的にも、一定の評価を得た。

確かにその通りであろう。イスラエルはこれでイランが生産した、ミサイルの一つの性能を知ることが出来たし、対ミサイル防衛の技術を、向上させることが出来るだろう。

ハマースは今回の戦争を経て、完全にパレスチナの代表組織の一つになり、逆にPA(パレスチナ自治政府)は、パレスチナを代表する唯一の組織ではなくなった、ということであろう。そして、エジプトのモルシー大統領に対する、アメリカのオバマ大統領の評価は高まった。

メデタシメデタシということのようだが、必ずしもそうではない部分もある。イスラエルはテルアビブまでミサイル攻撃を受けた。つまり、アイアン・ドームは完璧には機能しなかったということだ。従って、将来レバノンのヘズブラやイランが攻撃してきた場合、どれだけ防御できるか疑問が沸いてくるし、そのことはイスラエル国民に、大きな不安を呼び起こしていよう。

ハマースについて言えば、イスラエル国民と政府はやがて、ガザからパレスチナ人を段階的に追放しなければならない、と思わせたことだ。先に述べたように、ガザのパレスチナ人は、将来シナイ半島に追放されるかもしれないのだ。

エジプトのモルシー大統領について言えば、ガザ戦争を機会に自信を持ちすぎたのであろうか、非常大権を発することにより、足元の国内で反対運動が拡大している。

物事には何でも裏と表、功と罪があるということであろ。