『サウジアラビア変革への二つの兆候』

2012年11月28日

サウジアラビアのアブドッラー国王が、危篤状態に陥っているという情報が、イランのプレス・テレビを通じて、流れ出している。アブドッラー国王は89歳と高齢であり、これまでも何度となく入院し、手術を受けてきていた。

アブドッラー国王は高齢であることから、心臓、肝臓、肺増などを患っていたようだ。今回も健康悪化に伴い、サウジアラビアの首都リヤドの病院で、集中治療を受けていた。

現段階では死亡が確認されたわけではないが、近い将来に、サウジアラビア政府が治療をあきらめ、死亡を発表するものと思われる。いまの段階は医療機械を駆使し、何とか生命を維持している、ということのようだ。

問題は、アブドッラー国王が死亡した後のことだ。以前からアブドッラー国王については、広く国民に愛されており、彼が国王の座にある限り、サウジアラビアでは政変は起きないだろう、と言われてきていた。

しかし、ほぼ近い将来の、国王の死亡が明らかになった今は、サウジアラビア国内で反王制の動きが、活発化するのではないかと思われる。後継者は述べるまでもなく、サルマン皇太子であろうが、彼に対する国民の支持が、どの程度なのか疑問がある。

アブドッラー国王の危篤情報が流れたからではあるまいが、首都リヤド市では受刑者の家族による釈放要請デモが、繰り広げられたという情報が、イランのプレス・テレビから流されている。

その情報によれば、アール・サウド刑務所に投獄されている、政治犯の家族を中心に、デモが行われたということのようだ。結果的に、デモは制止され子供6人、女性23人、男性が30人逮捕されたということだ。これらの逮捕者のほとんどは、多分受刑者の家族であろうと思われる。

このデモの前には、首都リヤド市の北部に位置する、ターイフ市でもデモが起こっている。このデモもリヤド市で起こったデモと同様に、受刑者釈放要請デモであったということだ。また、サウジアラビア各地で民主化要求デモや、女性の運転の権利を要求するデモも起こっている

これらとは趣旨は違うが、アルカテイーフ市を中心とする、サウジアラビア東部のシーア派地区では、差別撤廃要求などを中心とするデモが、何度となく繰り広げられてきている。

アブドッラー国王が死亡した場合、これらのサウジアラビア国内の不満が、一気に表面化することが、懸念されるのではないか。