サウジアラビアは大分前から、外国人従業員を大量に雇い入れてきていた。70年代の初期には、英語を話し仕事が出来る、インド人やパキスタン人が多く、それと並んで、アラブ人で英語が話せる者が、重用されてきていた。
以後、石油価格の値上がりから、サウジアラビアを始めとする湾岸産油諸国は、経済発展を遂げることになるが、建設部門や一般商店でも、外人従業員が必要となっていった。
結果的に、サウジアラビアでは現在、840万人の外人が仕事に従事している。彼らは長期滞在組が多く、企業のオーナーたちはほとんど、この外人スタッフに仕事を任せていて、も安心切できる状態になっているのだ。
問題はこの840万人の外人従業員の反対側には、仕事に就けないサウジアラビア国民が、いるということだ。最近になって、サウジアラビア政府によって発表されたデータによれば、448000人のサウジアラビア国民が仕事を求めているが、就職できないでいるということだ。
そうなると、サウジアラビア国内では外人従業員を解雇して、自国民に就職の機会を増やすべきだ、という意見が出てくるのだが、そう簡単にはいかない事情がある。ここで忘れてならないのは、外人従業員に出来て、サウジアラビア国民には出来ない仕事が、沢山あるからだ。
細かい貿易の書類作成や、物品の管理、機械の修理などは、サウジアラビア国民には出来ないことが多い。それと時間厳守で一定の仕事をこなすこと、も要求されよう。そうなると、その仕事に従事することが出来る、サウジアラビア国民は少ないということになる。
加えて、外国人従業員に支払う給料と比べて、サウジアラビアの従業員に対して支払う給与や、社会保障費は大幅に高いものになろう。
サウジアラビア政府はこれまで、サウジアラビアで操業する外国企業に対し、外国人の人数に対して、一定の人数のサウジアラビア国民を、従業員として受け入れるよう法律で定めてきた。しかし、そこにはいくらでも、抜け穴があるということだ。
加えて、サウジアラビア国民男子は、民間企業よりも政府の仕事に就く事を希望する。その方が休暇や給与、社会保障面で、絶対的に有利だからだ。女性については、多くの人たちが教育の仕事に就く事を、希望しているということだ。この場合もほとんどが国立の学校であり、国家公務員ということになろう。
サウジアラビア国民の間では、未だに仕事の厳しさや、まじめに取り組む必要があることを、正しく理解している人が少ない、ということではないのか。