『ガザ問題でマハムード・アッバースの影が薄くなる』

2012年11月21日

ガザでの戦闘が拡大し、問題が国際化するなかで、ガザのハマースをリードするハニヤ首相と、ハマースの幹部ミシャアエル氏の国際的認知が、高まっている。彼らが主体となって、関係諸国との問題処理を担っているから、当然のことであろう。

ヨルダン川西岸地区住民の間でも、ガザ住民に対する同情と、一体感が強くなりつつある。そうしたなかで、次第にマハムード・アッバース議長に対する評価が下がり、彼はパレスチナ全体を代表する、存在ではなくなりつつあるのではないか。

イスラエル政府やアメリカは、今のところマハムード・アッバース議長を、唯一のパレスチナ代表と認め、交渉の相手としているが、それは表面的なものであろう。イスラエルのネタニヤフ首相は最近になって、マハムード・アッバース議長はガザ訪問すら出来ない状態で、パレスチナ全体の代表と言えるのかと皮肉っている。

確かにそうであろう。マハムード・アッバース議長がガザを訪問しようとすれば、命の保証は無いということであり、とてもその危険を押して、ガザに出向く気にはなれまい。

ヨルダン川西岸地区でも、外国からの援助が減ってきていることから、公務員に対する給与の支払いも、公共事業への投資も、出来なくなってきており、ヨルダン川西岸地区住民の不満は高まっている。

当然のことながら、そうした状況は反マハムード・アッバース感情を高め、ガザへのシンパシーを高めている。ヨルダン川西岸地区では、次第にマハムード・アッバース議長による統治に、問題が発生してくるのではないか、とすら思える。

今回のガザ問題をめぐっては、ガザのハマースの幹部が、トルコやアラブ諸国、エジプトとの交渉を進めている。もちろん、間接的ではあれイスラエルとの交渉も、マハムード・アッバース議長が率いる、パレスチナ自治政府ではなく、ガザのハマース組織が担っているのだ。

ガザでイスラエルとの戦闘状態が起こったことにより、欧米もまたハマースの存在を無視できなくなってきており、次第にハマースはパレスチナ自治政府と並ぶ、パレスチナの代表になっていくのではないか。

そうなれは、パレスチナはパレスチナ自治政府が統治するヨルダン川西岸地区と、ハマースが統治するガザ地区に、実質的に分裂していくということであろうし、それが固定化していくのではないか。