『経験不足のムスリム同胞団政権への不安』

2012年11月20日

 

ガザの状況がだんだん悪化してきている。もちろん、国連もアメリカ政府もヨーロッパ各国も、一日も早い戦闘停止を、イスラエルとガザ地区のハマースに呼びかけている。しかし、現段階のミサイルやロケットによる、ガザ地区からのイスラエルに対する攻撃も、イスラエルによるガザ地区への空爆も、止みそうな雰囲気には無い。

それどころか、イスラエルは地上軍をガザに侵攻させ、徹底的にガザの抵抗勢力を、叩き潰そうという姿勢も見せている。イスラエルがここまで本気になっているのに、は幾つかのことが理由として考えられる。

一つは、頼みの綱のアメリカ政府の、イスラエルに対する対応が、醒めてきているということだ。このこともあってか、イスラエルのネタニヤフ首相が、ロムニー候補支持を呼びかけたにもかかわらず、アメリカ在住のユダヤ・アメリカ人は、オバマ大統領に票を投じた者が多かった。自分たちの安全をイスラエルの安全以上に、考えたからではないのか。

もう一つは、ヨーロッパで広がる反ユダヤ感情だ。最近ではナチの真似事をする連中が、おおっぴらに活動をするようになってきている。それに対するヨーロッパ各国政府の対応は、イスラエルやユダヤ側から見れば、不安で仕方の無いことであろう。

イランの核開発も、ネタニヤフ首相が短期に核兵器が出来る、とあおったために、イスラエル国民の相当部分が、強い不安を感じているであろう。実際には、イランが核兵器を開発に向かっているとしても、完成はまだ数年先のことであろうが、ネタニヤフ首相の宣伝が効いて、数週間、数ヶ月先にはイランが核兵器を持ち、イスラエルを攻撃する危険性がある、と多くのイスラエル国民が、不安がっているであろう。

こうしたことが、イスラエルをして強硬な立場を、採らせているのであろうが、そのことに加え、ガザのハマース(ムスリム同胞団の組織)とエジプトの現政権は、同じムスリム同胞団であることから、ムバーラク政権時代とは全く異なる、エジプトの現政権はシンパシーを、ガザに感じていよう。

このため、エジプトのムスリム同胞団から選出されたモルシー大統領は、出来るだけガザを支援する、と言い始めている。しかし、ムスリム同胞団もモルシー大統領も、政治の経験は浅く素人同然であろう。

そうなると、一歩間違えればエジプトが、ガザ救援の軍事行動に出る可能性が、否定できなくなる。モルシー大統領は『すべての能力をもってイスラエルの攻撃と流血の事態を阻止するために立ち上がる。』と語ったということだ。

その言葉には戦争も含まれている、とイスラエル側は受け止めているのではないのか。そして、エジプトもガザ戦争に巻き込まれる危険があるのではないのか。