エジプトはいま、最大の苦難の中にあるのかもしれない。ムスリム同胞団が結成した自由公正党が、与党になったのはいいのだが、サウジアラビアを始めとする湾岸産油諸国は、押しなべてこのムスリム同胞団を、危険視し始めているからだ。
そのため、エジプトのモルシー大統領が湾岸諸国を訪問しても、ムスリム同胞団のナンバー2といわれている、シャーテル氏(最初のムスリム同胞団が立てた大統領候補)が訪問しても、湾岸諸国は資金援助を口にしなかった。
このため、エジプトは資金難に直面している。エジプトが必要とする輸入資金は、月額で、48億ドル程度といわれているが、エジプト政府がIMFと交渉している借入額は同じものであり、たとえ借り入れに成功しても、1か月分の輸入資金にしかならないということだ。
カイロに滞在してみると分かるのだが、外人観光客が泊まるホテルは、押しなべて閑古鳥が鳴いている。もちろん、市内にも外人観光客の姿は少ない。それよりも、空港のイミグレーションで、長い列が出来ていないのだ。以前はイミグレーションを通過するだけでも、こ一時間かかっていたのだが。
エジプトでは経済苦から、電力の消費削減が言われ、24時間眠らない街が魅力だったカイロも、どこか薄暗い感じになっている。エジプト人の誰に聞いても、現政権が頑張っているとは言わないばかりか、不満の声が聞こえてくる。
ムスリム同胞団の経験不足が、いろいろな問題を生み出していることも事実だ。そうしたなかでも、エジプトはアラブの盟主としての立場を、守らなければならない運命にある。
最も関係の深いガザのハマース政権に対し、エジプト政府は支援の手を伸べなければならないのだが、現状は戦争前夜だ。ガザの緊張の中で、ムスリム同胞団の幹部がガザを訪問したが、帰国は危険なものだったようだ。
エジプトのカンデール首相の訪問は、何の成果も生み出すことは無かった。それは彼の経験不足と、状況が厳しいためであろう。カタール、ハマース、トルコ、エジプトの首脳が、カイロで行った討議でも、何の解決策も出てこない。
そうしたなかから、エジプト国内では政府に対する不満が、イスラエルに対する敵意と一緒になり、戦争待望を叫ぶ者すら出てきている。しかしサダト大統領のときとは、状況が全く別であろう。エジプトが現在抱えている問題に対する、何の改善も生み出さないということだ。
エジプトでは公務員に対する給与が、半分しか支払われていないようだ。それは警察や軍の幹部に対しても、同じだということのようだ。これでは一体誰が現政権を、守ってくれるのかと疑問が沸く。