ここせいぜい4~5日前から、クウエイト国内の様子を報じる、ニュースが増えている。それはいい方向へではなく、悪い方向へ推移している、というニュースばかりだ。
クウエイトでも他のアラブの例にもれず、アラブの春革命の影響が及び始め、デモを行う国民の数が増えているようだ。高額の政府補助制度があり、豊かな暮らしを保証されているクウエイトで、何が不満なのかと言いたくなるのだが。
しかし、そうは言うものの、クウエイト社会には、幾つかの問題が以前からあった。一つには、何代にも渡ってクウエイトで生まれ、生活している人たちのなかに、ビドーンと呼ばれる、国籍不保持者たちがいることだ。
第二にはシーア派国民に対する差別だ。王家はスンニー派であり、スンニー派国民に比べ、シーア派国民の人たちは差別、区別されてきている。
第三にはサバーハ家への権力集中が、長く続いてきたことに対する、国民の不満だ。クウエイト首長(国王)から閣僚首相職まで、ほとんどの重要ポストが、サバーハ王家の人たちによって、占領され続けてきているのだ。
ビドーンについては、サバーハ王家が少しずつ妥協の姿勢を示し、国家と王家に対し、従順な家族は認められ、国籍を与えられつつある。そのことは、多くの有形無形の権利を、国家から得ることであり、生活が豊かになっていく、理由でもある。
クウエイト政府は国民に対し、クウエイト石油社の株を配布し、株の利益配当を行うという形で、富を配分してきていたからだ。それだけではなく、あらゆる公共サービスを、受けられることになるが、住宅の取得にあたっても、政府が補助してくれる、制度になっているようだ。
そうは言っても、ビドーンに対する国籍付与は、まだ本格的ではなく、一部に対してのみであり不十分だ。シーア派住民もしかりで、イランと湾岸諸国とに緊張関係が高まっている現在は、なおさらで政府は彼らの動きを、警戒しているようだ。
現在そうした不満から、幾つもの反政府政党や、グループが誕生している。それらを大まかに分けると、イスラム系の組織、リベラル派の組織、、部族を中心とした組織などだ。
どうやら、現在の段階になって、クウエイト社会内には、あらゆる思想、出自の人たちによって、サバーハ王族に対する批判勢力が結成され、誕生したということであろう。これらの組織が簡単に連帯し、一つの組織に固まっていくとは思えないが、王家にとっては極めて不安な、今日の推移であろう。