『信仰深い者には俗の暮らしぶりと楽しみが分らない』

2012年11月 6日

エジプト政府は午後10時過ぎの外出を、自重するよう呼び掛けた。そして、レストランも喫茶店も商店も、午後10時で閉店するように国民に言い渡した。

しかし、その政府の命令は、商店主やレストランのオーナーたちによって、猛烈な反発を食らったようだ。結果的に、政府は午前2時の、完全閉鎖を命じることになった。

この閉店時間の決定をめぐって、気になることがある。第一にエジプト人はラテン系民族に似ていて、おしゃべり好きであり、夜は遅くまで起きている。カイロのホテルに宿泊して辟易するのは、夜中の1時2時になっても、デスコやガーデンショウの音楽の音が、聞こえてきて寝難い、ということがある。

エジプトの結婚式に出席して気が付いたのは、年齢に関係なしに、エジプト人の男女が、欧米の音楽に乗せて踊りまくるということだ。彼らの踊りっぷりは、ほとんどブラジルのサンバ並みに、激しいものだった。

夜の早い店じまいは、問題が多いだろう。遅い夕食をとり、その後、水タバコ屋で侍って友達と談笑して、家路に向かうのが2~3時はざらだからだ。

自宅にエアコンなど無い、貧民層にとっては、暑い夏の夜に、大型のショッピング・モールに出かけ、ウインドー・ショッピングを楽しみながら、涼むのが習わしだ。冬も同じように、暖房の効いたスペースで、彼らはくつろげるのだ。

つまり、エジプトの庶民も、湾岸などから来た観光客たちも、カイロの街が24時間明るく輝いていることに、満足しているのだ。電力不足を口実に始まった今回の騒動は、結果的に成功しないだろう。

節電が徹底されれば、湾岸からの観光客もエジプトの庶民も、買い物にもレストランにも、行かなくなってしまうのだ。それよりも、エジプトへの観光が魅力的でないとして、他の国に行かれてしまうかもしれない。

商店主たちは官庁のビルが、24時間煌々と電灯を付けていることを、批判している。節電を唱えるのなら、そちらが先だろうというのだ。

現在、エジプトの与党を形成しているのは、ムスリム同胞団のというイスラム原理主義組織、イスラムの教えでは『夜は安息と礼拝の時間』とか。しかし、いい年をした年配者なら兎も角も、若い層はそんなわけにはいかないだろう。

最近、政府がムスリム同胞団になったにもかかわらず、若者の不道徳な行動が、社会問題になっているということだ。ナイル川のほとりを、集団で散歩する女性たちに、やはり集団で散歩する男性たちが、声をかけちょっかいを出している、という批判がネット上で指摘されていた。

夜の散歩には、ショッピング・モールの方が、安全なような気がするのだが。