リビアでアラブの春革命が起こり、カダフィ大佐が殺害されてから、既に1年の歳月が流れている。しかし、リビア国内は未だに新しい政府が、国家再建に向けて、フル活動を始めているわけではない。
首相に選任された人物が、嫌気をさして辞任するということが、何度と無く起こっているし、最近就任したゼイダーン首相に対しても、反発するグループが、リビア国内外に多数存在する。
リビア東部のベンガジを中心とした地域では、自治権獲得を叫ぶ者がいるし、イスラム原理主義者もいる。不幸にして、その犠牲になったのが、アメリカ大使だ。彼はリビア革命を賞賛し、支援して来た人物だけに、気の毒な話だ。
最近、ゼイダーン首相の指揮の下に、リビアで国会(議会)が開催されたが、その議会場に、武装したリビア人集団が押しかけ、会議を潰している。一説によると、彼らは死亡したカダフィ大佐の、信奉者たちだということだ。
11月4日には、東部のベンガジでも西部のトリポリでも、銃撃戦が起こっている。つまり、リビア国内状況は未だに、安定していないということであろう。
リビア国内でこうも不安定な状況が続くのは、カダフィ時代に大量に買い込まれた、武器類が一般国民の手に、渡ってしまった結果であろう。そのため、少しでも不満があれば、彼らは武器を手にして、強硬な交渉を始められるということだ。
11月4日には、リビアの治安本部ビルに対しても、攻撃が行われている。つまり、治安部も警察も軍隊も、現段階ではキチンと機能していない、ということであろう。
何日か前に、イスラエルの専門家は、アラブの春革命後の安定までには、これから10年はかかろう、と言っていたが、まさにその感じがする。しかも、未だにアラブの春革命が始まっていない国でも、アラブの春革命の兆候が、見え隠れし始めているのだ。
クウエイトでは国内デモが激化しているし、政府の対応も力づくになって来ている。バハレーンもしかりだ。述べるまでも無く、シリアでは毎日何十人もの、犠牲者が出ている。エジプトのシナイ半島では、治安警察が何度かに渡って、殺害されている。
リビアで目立つ不安定な状況は、実はアラブの春を経験した国も、経験していない国も、同じ様な状況なのかもしれない。それが、リビアを始めとする、産油国に拡大しつつあることが、日本にとっては不安なことだ。