『シリア反政府派の分裂と統一の試み』

2012年11月 4日

 大分前に、アラブ連盟加盟国を皮肉る、ジョークが流行ったことがある。それは『アラブ連盟の会議では何も合意されないが、唯一の例外がある。それは合意しないことに、合意することだ。』というものだった。

よく言えば、アラブ人はそれぞれに自分の考えを、持っているということであり、悪く言えば、全く協調性がなく、他の人の話を聞き入れない、ということであろう。

それは何も、アラブ連盟の会議に限ったことではない。一国の国内会議でも、地方の会議でもあらゆるところで、そうした傾向が見える。従って、部族の長しか話し合いを、まとめられないのだ。

従って、国家レベルでは独裁的に、強いリーダー・シップを発揮する人でなければ、国家を運営していけないのだ。アラブの春が独裁者追放打倒に動いたが、その後の各国の状況を見ていると、結果的に、大混乱が続いているだけではないのか。

いまシリアでは、毎日何十人もの死者を出す、激しい戦闘が展開されているが、ここでも合意の無い会議が、何度と無く開かれている。反政府派を代表する各グループの長が、集って会議を開いても、何も合意できないでいるのだ。

それどころか、最近では反政府側のSFA(シリア自由軍)と、シリア・クルド組織(PYD)が殺し合いを始めているのだ。つい最近も、シリア・クルド組織(PYD)のアレッポ地域リーダーである、シャー・アリー・アブド氏がFSAの戦闘員によって、殺害されている。

シリア・クルド組織(PYD)によれば、これまでにFSA(自由シリア軍)によって、180人のクルド人が人質に取られ、虐待され殺害されているということだ。こうした混乱について、シリア・クルド組織(PYD)側は、アサド体制側の策謀によるものだ、と指摘している。

それにもかかわらず、近くカタールのドーハでシリア反政府各派の、会議が開かれる予定だが、何の結論も出ずに終わるのではないか。この会議はシリアの反政府各派に対し、カタールがアメリカの意向を受けて、資金援助をするためではないのか、と思えてならない。

こうした会議は、大国を中心に、自国の支援する側が正当なのだ、ということを宣伝するための、ものでしかなかろう。会議に先立ち、シリアの反政府側は、シリア軍の残虐行為を映した映像なるものを流しているが、それが本当に政府軍によるものなのかどうかは、私には判断できない。