レバノンのヘズブラの代表ナスラッラー師が、イスラエルに対して、極めて危険な警告を発した。もし、イスラエルがレバノンに攻撃を加えるようなことがあれば、1000発のミサイルをイスラエルのテルアビブ市に降らせる、と言ったのだ。
レバノンのヘズブラとイスラエルとの間では、2006年に戦争が起こり、ヘズブラとレバノンは相当の被害をこうむった。しかし、同時にイスラエル側も、アラブ・イスラエル戦争で経験をしたことのない、大被害をこうむっている。
このため、レバノン戦争後に語られたのは、精神的なイスラエル側の敗北だった。イスラエルの高官たちは軍の幹部も含め、誰もがこの戦争の結果について、責任を取ろうとしなかった。
ゲリラ戦が正規軍に勝てる、という見本のような戦争になったわけだが、今回のガザ戦争でも同じことが、言えるのではないか。ガザに対してイスラエルは徹底的な空爆作戦を行ったが、ガザ側はその被害について、歯牙にもかけていないのだ。
他方、イスラエル側は莫大な資金を投入して構築した、アイアン・ドームと呼ばれる対ミサイル防御システムが、完ぺきではなかった。イスラエルの南部だけではなく、ガザから発射されたミサイルは、テルアビブ市やエルサレム市にまで到達していたのだ。
そうした流れの中で、ヘズブラのナスラッラー師は強気の発言を行ったわけだが、その裏には2006年当時とは全く異なる、進歩したミサイルを多数入手していることもあろう。2006年の戦争当時は、イスラエルの北辺の街がミサイル攻撃の対象となった。
いまでは飛距離の長いミサイルをヘズブラは入手しており、テルアビブでももっと南のデモナの原発でも、攻撃できるようになっているのだ。しかも、そのミサイルの数は相当量、増えていると言われている。
ガザのパレスチナ勢力のミサイルが、テルアビブ、エルサレムまで届いたのは、イランが製造したファジュル5ミサイルを、入手していたからであろう、と言われている。
このことについて、ガザのハマースは否定し、技術はイランから提供され、自分たちで製造したと言っているが、ジハード・イスラーミー組織はファジュル5ミサイルそのものを、イランから受け取っていたと語っている。
イスラエルはいま、南にはガザのハマースという敵を抱え、北にはヘズブラという敵を抱えることになった。しかも、この二つの組織は戦闘意欲満々なのだ。加えて、ヨルダン川西岸地区の穏健派パレスチナ人の間にも、イスラエルと戦いたいという欲求が、高まってきている。イスラエルの危険度は、日に日に高まっているということだ。